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志村恭介編 古城
「研究の為の宿泊所です。ある訳がありませんよ」
品川が再びぶすっとして答えた。彼からすれば、脇坂は余りに次元の超えた人物であった。
「買って来ましょう。肴はアマゴの干物がどっさりありますので」
志村が言うと、脇坂が嬉しそうな顔になった。
「そりゃあ、ええ。それと1つ質問だが、村人の出入りはあるのか?」
「はあ・・学者が調査に来たのが珍しいのか、我々が居る間はしょっちゅう」
志村が少し困惑した表情で答えた。人嫌いの脇坂が嫌がると思ったからだ。
「ふむ・・それじゃ、今から村長に電話せい。脇坂先生が講演してやるとな」
志村と品川が顔を見合わせた。まるで、この老博士の意図するものが分からなかったからだ。そんな事をすれば全国へ知れ渡ってしまうでは無いか、脇坂の所在が・・。




