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志村恭介編 古城
「ほ、ほほ。品川と言うたかのう、お主、何歳かの?」
「24歳の誕生日を迎えたばかりですが、それが何か?」
「若いのう、いや、若い。結構じゃよ。その位のバイタリチーが無けりゃつまらんわい。学者になるにはのう。先ほどからせっかく採取して来たサンプルを捨てるのが気に要らんかったか、それとも自分の尊敬する恩師の悪口にむっと来たんかは知らんがのう、じゃが、これだけは覚えておくが良い。真に必要なものは1つでええんじゃ。多くの材料で歴史は語れんのじゃ、枝葉を論じた所で所詮は本質にはならんのじゃよ」
品川の顔は見る見る上気し、泣きそうな顔になった後、黙ってうなだれた。本当は、苦労して集めた標本を事もなげに捨てられた事に、少々カチンと来ていたのだ。脇坂に鋭くその心理を見破られた。
「まあ・・それより博士、その理由を教えて下さいよ」
志村が言うと、
「お前達、塒はどこじゃ・・?」
「別子村に一軒屋を借りております」
その志村の返事に、一瞬脇坂の眼には躊躇したものを感じたが、
「そんなら、そこへ行って話そう。暫くわしもやっかいになる。それと酒はあるんじゃろうな?」




