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志村恭介編 古城
「ふ・・こんなガラクタばかり拾ってきおってからに」
脇坂は、ぽいぽいとその辺りに、拾って来た石を投げた。慌てて拾おうとする品川に拾うな!と言う仕草をした。品川は又ぽかんと二人を見ていた。
「ほりゃ!この石じゃ、志村よ。これはどこで拾った?」
脇坂が突然差し上げた石を見た志村は、
「別子銅山の斜面上に露出していた岩盤層です。相当大きな地層でしたが・・」
「滑石じゃ。住友め、この滑石を売れば、又あの村も少しはにぎやかになるのにのう。あれだけの鉱脈を掘ろうとせんわ」
「・・何に使うのです?その滑石を」
「何?知らんと持って来たのか、志村・・お前は学者に向かんぞ」
脇坂が志村に言うと、品川がむっとした顔で反論した。
「し、失礼でしょう。いかに脇坂先生とは言え、志村先生は若くして博士号を取得して、当大学1の研究者です」
脇坂の顔が綻んだ。




