27/1226
志村恭介編 古城
「先生!これ」
品川が指差した大きな岩の割れ目に、3から4センチ長位の水晶が見えた。
「ほう・・水晶だね。少し一部を切り取って見よう」
ハンマーでその一部を叩き割り、既に、数種類の岩石を入れた麻袋にそれをしまい込んだ。
そして、その夜はその近くにテントを張った。
「先生、明日は石鎚山系ですね」
「ああ。この自然は充分に生きて行ける力を内包していると感じたよ」
「・・それはどうしてですか?」
「水晶・・って何か特別なものを感じないか?」
品川の質問の方向が志村からは、全く違うもので返って来た。
「は・・はあ」
「水晶は翡翠等と並んで、勾玉として出土する事も多いし、加工する技術があれば、自然の創った諸道具になり得るものだ。そして彼等・・敢えて村人と呼ぼう。狩猟、首飾り、そしてこの辺で水晶があると言う事は近くで大量に発見されれば、多いに期待が出来るし、それは即ち文明の象徴のように価値があると思えないか?」




