志村恭介編 古城
品川は、眠れる獅子が眼を醒ました如くの突然の志村の行動に、自分ももっと高い位置へステップアップ出来るかも・そんな期待を持っていた。品川は今24歳。これからの人間である。
2人が最終的に本拠地として選んだのは、東赤石山から更に南に下った、別子村と言う小さな村落だった。一昔前は住友別子銅山として江戸時代より続く大変な銅鉱石の鉱山して栄えた場所であったが、現在は閉山となった、今の集落の人口は300人程度だとか。その中の一軒屋を、無料で借りる事となり、2人の行動拠点が整った。これで寒い冬も自由に動きが取れる。親切な村人の好意に甘える事になったが、2人の目的はこの地には何かがある・・そんな予感のようなものを感じていたからでもあった。
「先生・・先ほど村の人がアマゴの干物と、手造りのみそを置いて行ってくれました」
「有り難い事だ。都会では考えられない人情に溢れている村だ。でも、それ以上に我々学者と言うのが珍しいのかも知れないね」
「はあ、確かに・・。先ほども長老連中が土地の話を一杯して行きましたからね」
「お陰で、この辺りの鉱山の歴史は良く分かったよ」




