志村恭介編 古城
「僕には石の事は良く分かりませんが、何か赤石山と言う名が示しているような石ですね」
「そう、その名の通り。一昔前にルビーが産出されると言われていたようだが、私にも、石英の赤いものなのか、変成岩なのか専門外なので良くは分からん。それよりも、この地がやはり重要なポイントなのだと感じたよ」
「そうですね、不吉な赤なのか、それとも・・何か僕もどきどきして来ましたよ」
余り夢を語らない現実的な人物かと思っていた品川が、大自然の中では人が変わったようだ。彼の隠された部分かな・・志村は感じた。
「南国の四国かと思っていたが、ここらは高地。思った以上の厳しい冬になると思う。どこかで塒を探して、その本拠地より行動せねばならない。雪が降る前に何かの手掛かりを探そう」
二人は場所を決めるべく、二ツ岳、西赤石山、赤星山と、縦断のコースを行ったり、又戻ったりしながら、一端この山歩きを中断した。地元の人々の生活、風土、歴史や民話等も調べて見ようと、赤星山の山小屋で一泊した後、明日からのコースを相談していた。前山だが標高1500メートル近く、ふもとから眺めると、富士山のようななだらかな尾根が見えるこの山が、これ程急峻な山だとは思いもよらなかった事から、地元の人々の山岳に対する畏敬の念の逸話も聞けるのでは?そんな思いがして来た所だった。




