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志村恭介編 ニ尾城
その数日後、俵家に一本の電話が入った。思いがけず、それは香月からであった。香月はS工大で、教授として多忙な日々を送っている筈。俵家に電話が入ったのは、実に3年ぶりの事であった。
「博士!」
清治が電話を取った。
「やあ!」
香月の声は明るかった。それは、清竜号のGCHの称号授与を祝福する電話だった。数分会話を続けていた清治だったが、ふと話を転じた。
「・・ところでですね?博士。脇坂博士とお会いしませんでしたか?・どこか暖かい所で」
「・・・清治君・・あ・・そうか。君は予知夢が見えるって言っていたね」
少し驚いた風の香月だったが、すぐ
「ああ・・会ったよ。沖縄で、ほんの5分程度の短い会話だったが」
「僕が気になるのは、脇坂博士はお元気でしたか?その時」
清治が尋ねる先を、既に香月は悟っていた。