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志村恭介編 ニ尾城
やはり、この男は只者では無い、それも政府関係者とは違う・・志村は思った。
「はっきり申し上げますが、私は思想家では無い」
「関係ありません。私達にとって、今貴方を監視すると言う権力の動きを知る事が重要であって貴方を同志とする意思は持っていません。情報を知りたいだけです」
「つまり、私が協力するしか無いと?」
「言葉には少し御幣がありますが、現に貴方は動けない筈だ。この私の行動によって、貴方を監視するある機関がきっと姿を見せる筈です。貴方にとっても、我々にとってもチャンスです」
「成る程・・そこまで計算して貴方がここへ来たのか」
「そうです。それは、貴方も知りたい筈です」
「確かに・・得体の知れない者に監視される重圧は大変なものだ・・つくづく私は思っています・・すると、品川君はその為に君に依頼したのか・・」
吉川は黙って頷いた。志村も頷き、そして、吉川は帰って行った。