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志村恭介編 ニ尾城
品川の背に向かって、岸上は鼻でふふんと笑った。用済みが消えて、岸上の地位は着々と固まりつつあった。
その頃・・・
志村の寝泊りする斎阿覚寺に、品川の福岡行きと前後して2人の人物が姿を見せていた。得体の知れない組織がいよいよその姿を現すかのようであった。2人とも常人では無い雰囲気を漂わせていて、その一人は、40過ぎのサラリーマン風で吉川と名乗った。
「はじめまして。私は吉川と申します」
差し出された名刺は、関東TV局のプロデューサーの肩書きであった。
「実はT大学の品川助教授の紹介でお伺いしました」
「はあ・・それで、ご用件は?」
志村は例の調子でぼそぼそと答えた。
「私は表向きは、関東TVのプロデューサーですが、元自衛隊の諜報部の特殊部隊に居ました。今でも自衛隊には独自のルートを持っています」
「・・・それで?」
淡々と答えながら、志村は吉川を見上げた。鋭い視線をしている男だった。




