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志村恭介編 ニ尾城
品川の眼からは大粒の涙が零れた。真世の素性を知る者として、品川と言うボディーガードを配置したのだ。それすらも超越した人間的志村の大きさであると、品川は思った。品川はただちに田村宅へ向かう準備を始めたが、志村との連絡役となるべき一人の人物に電話を掛けていた。その人物は快諾してくれた。・・・先生、せめてもの罪滅ぼしです・・。
大学での会話・・
辞表を提出した品川に、
「ま、待ちたまえよ、品川君。私は決して君を粗末にしたつもりは無いんだ」
岸上が心にも無い言葉で引きとめようとした。
「いえ、そうではありません。私の実家の家業を継ぐ為ですので。ご心配なく、教授。私は例の事を口外するつもりは全くありませんので」
最後に最大の皮肉を込めた言葉を残し、品川は考古学者の地位を捨てた。




