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志村恭介編 古城
「どうでした?」
「休暇は認められたよ。しかし、研究費は出せないそうだ」
「ち!あの商人学長、どこまでもせこい」
「まあ、予想していた通りの事だ。仕方あるまい。しかし、私の給料は何とか出るとして、君の給料は休職扱いになって厳しいかも」
「いいです。最初からそんなものはあてにしていません。少し位の蓄えもありますから」
「君がそう言ってくれるとは思っていたが、我々の研究はそれなりの資金も必要だ。事務局に掛け合って見るさ」
そこへ現れたのが、岸上助教授。いつもの薄ら笑いを浮かべながら、
「全く雲の上を見てる人は違うねえ。一体この重要な時期に半年間もどこへ行くのか、不思議な人達だよ」
岸上は、志村が教授の椅子を投げたと思っている。確かにそう言う意味に取られて当然であった。
「さて、どこへ行きますやら・・。君のように地に足をしっかり着けて無いと、すぐ天まで昇ってしまうのでね、はははは」
笑い声を発して背を向ける志村に、岸上が更に言う。