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志村恭介編 ニ尾城
だが、この最中に思わぬ志村の元への来訪者があった。それは、殆ど倒れそうになった、脇坂博士だったのである。志村が驚いて蒼白になった。
「は・・博士!何故ここに貴方が!」
「何い!脇坂博士じゃと!」
慌てて待田も飛び出して来た。しかし、脇坂の様子を見て、
「こりゃ、いかん!すぐ、わしの車で、旅館に案内せい!」
若い者に命じると、すぐ医者に連絡を取った志村が、待田と後から旅館に駆けつけた。
「何故・・今になってここへ現れたんだ・・」
志村は青い顔のまま呟いた。
「わし等の計画を全ておじゃんにする気いか・・」
待田も、沈痛な表情になった。
高村の旅館に入り、すぐ医者も駆けつけていたが、脇坂の容態は急変していて、既に危篤状態となっていた。余りの急変に志村も驚いた。