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志村恭介編 ニ尾城
思わぬ村落から近くの沢で、紅水晶が存在した事に、品川は震えていた。岸上はその鑑定を急がすと同時に、南方に当たる寒風山付近での集落跡もそのすぐ後発見し、新聞紙上を賑わせていた。その発見こそ、成果は別として、一応古文書の信憑性を証明した事として評価され、岸上は胸高々とT大学へ戻って行った。その後の発掘調査は現地の品川を中心として継続される事となった。
そんな折、別子村の山田村長の元へ、一人の人物が来村していた。
「お待ちして居りました」
山田村長は手を差し出した。相手もその手を握り返した。
「で?集落の発掘は進んで居りますか?」
「ええ、順調のようですよ。でもわしには余り興味も無い事で、見にも行っておりませんが」
「まあ、貴方にとっては、価値も無い事でしょうね」
この男は合田精司教授だった。
「水晶はその後どうなりました?」
「ええ・・根こそぎ・。ひどいもんですわ。上流で川を堰き止め、岩層ごと。ごっそりと」