131/1226
志村恭介編 ニ尾城
「勿論、今県と調整中ですわ。後2ヶ月ほどあれば、何とか」
「それでは遅すぎますよ。既に連休真近で、大勢の見物人が増えて発掘作業にも支障が出ている状況なんです。これが夏休みまで伸びたら、それこそ・・」
「まあ、まあ。我々も一生懸命にやっとります。が、この調査発掘のお陰で、村も多少活気が出て居るので・・あっはっは。これは冗談ですがな、ははは」
品川が眉間に皺を寄せたのを見て、山田村長は笑った。そんな意図があって、わざと県の許可を先延ばしにしているのでは無いか・・品川は思った。品川は、この狸村長とこれ以上やり取りをしていては・・と、村役場を後にした。
「おやっ!」
役場を出て、周囲を見渡した品川が、向かいの山の中腹辺りで、何かが光ったような気がして慌てて双眼鏡を取り出したが、それは一瞬の事で、もうその正体は掴めなかった。