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志村恭介編 古城
学長が志村に聞いた。学長が直接志村に聞くのは、既に彼の存在が学内でも大きい事を意味していた。学長は、もう2年も経ずして退職の身である。その為に学内が騒がしい事を百も承知しているが、実際に彼自身の学内での影響力は無に等しい。志村に聞くのは形式上のようだ。学長の名は志茂田英作、初老の細身の紳士だが、学内では『死んだ英作』と陰でばれていて、そんな存在感でしか、もはや無かった。
「考古学上有益な探求をする為です」
「うん、そうか・・しかし、研究費は出せんよ。しかし、君の自発的な休暇としてなら認めよう」
志村は含んだような笑いを抑えながら、一礼をすると、学長室を出た。室外では品川が待っていた。