12/1226
志村恭介編 古城
「餌・・?ですか。判りかねます。でも、仮にそうだとしてどんな益があると言うのです?」
志村は笑って、それ以上は答えなかった。余分な事を多く語らない。そんな志村に全幅の信頼をおいている品川は、もうそれ以上は聞かなかった。志村が発表した考古学の資料は既に発掘済みのもので、それ程価値の見出せるものでは無かった。しかし、学内でも一、二と言われる志村程の学識ある助教授が発表したからこその意味、真意なるものを周囲が探りに来ているのだ。大竹か白井かどちらに志村がつくかで出世が決まって来るかも知れない。そう言う動きが品川には何となく可笑しかった。周囲は、やはり志村の学識を認めているのに他ならないからである。
数日後、長期の休暇を申し出た志村と品川。その事で、学内が大騒ぎになっていた。研究の為と銘打ってはいるものの、その休暇の詳細理由が明記されていないからだ。それも半年間と言う長期の休暇であった。
「どうしてかね?」