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志村恭介編 ニ尾城
「そんな・・そんな話があるかよ!由利さんの気持ち次第だろ?兄貴の恋人を横取りするような下衆野郎に由利さんを渡して良いのか?なあ!兄貴!」
恵二は興奮して叫んだ。
「恵二!」
恭介が怒声を上げた。その眼光と迫力に、恵二が驚いた。
「俺だって・・俺だって悔しいさ・。今すぐにでも由利を奪ってこの手に・・。でもな、出来ないんだよ。今となっては・・」
恭介の握り締めた拳が小刻みに震え、その手からは血が滴り落ちる程だった。
「一体・・何で?どうしてなんだよ、兄貴。何やってるんだよ・・ここで・・」
現代青年そのものの、華やかで明るいこの恵二が涙声になって声を震わせて言う。
「言えない。だが、信じてくれ。俺は今、命を賭けている。それだけ分かってくれよ」
「分からねえよ。父さん、母さんはどうするんだよ。母さん、兄貴の事が心配で倒れちまったぜ」
「済まん、お前がしっかり母さんを頼む」
それだけ言うと、恭介は恵二に1つの箱を手渡した。その小田錦鯉センターとある箱には、一匹の錦鯉が入っていた。




