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志村恭介編 ニ尾城
「覚悟はしていたさ。ただ、予想外に俺の解雇が早かったがね」
真っ黒に伸ばした顎鬚を擦りながら、恭介は笑った。恵二はやっと現実に戻っていた。
「そ・・それじゃあ、由利さんの結婚相手が、兄貴のライバルだった岸上って奴だって事もかよ!俺の同級の奴に聞いたが、平気で人を蹴落とし、虫唾が走るような野郎だって言うじゃねえかよ。何やってるんだよ!兄貴。良いのか、それで!」
恵二は興奮して怒鳴った。恭介が驚いた顔をしたが・・しばらくして、
「・・そうか」
短く言ったまま、何も言わなかった。そんな兄の態度に恵二は信じられないと言うような顔をして、
「俺!由利さんを攫ってくるぜ!」
突然思いついたように、恵二が叫ぶ。
「止せ!恵二。由利が岸上を選んだんなら、仕方の無い事だ。それにな・・岸上は元々学生時代から由利が好きだったんだよ」




