104/1226
志村恭介編 ニ尾城
「いいの・・いいのよ。恵二さん、貴方が謝る事じゃ無いもの」
恵二が顔を上げると、由利と眼が合った。由利が少し顔を横に向けた。何かおかしいと恵二は思った。そして、由利が恵二に白い刺繍の包みを渡した。
「これは・・?」
「恭介さんに連絡がついたら、私からだって言って渡して。以前恭介さんから預かったものだから・・と」
そう言うと、由利は千円札をテーブルに置くと、恵二に一礼して外へ出ようとした。恵二が大慌てで、後を追いかける。由利に追いついたのは天王寺公園の手前であった。
「待って、待ってよ。由利さん。まさか?これ・・」
由利の眼から大粒の涙が零れた。恵二はハッとした。
「私、来月に結婚するの」
「ええっ!」
恵二が驚いた。
「私には、もう後戻りは出来ないの。それを伝えたくて・・」
「そ、そんな・・だって」




