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志村恭介編 ニ尾城
「品川君、これが現実さ。幾ら我々が調査とか資料を集めた所で、肝心な後ろ盾が動かぬ以上、個人の力ではどうする事も出来やしないんだ」
「でも!でも先生、今回は発表材料があるじゃ無いですか!」
「考えても見ろ、岸上が許すと思うか?それにだ・・岡山と島根なら近いじゃないか」
「え・・?何の事でしょう」
「ふ・・君の視線に気付かぬ私だと思うか?真世ちゃんの視線もまんざらでも無さそうだったし」
品川の青白い顔が、真っ赤になった。
「私は私で、もうしばらくこの地で善後策を講ずるさ。それまで、どうしようも無いだろ?現実的に」
志村は2日後、若い品川を見送ると同時にエールを心から送っていた。
志村は、一人冬空を見上げていた。その眼には涙が光っていた。




