戦いの果てに
「はい、じゃあガンダーロボ勝ったから、もういいね? ママ、疲れたから休憩しよ? 大和、冷蔵庫にプリンがあるから、食べていいよ?」
亜樹は苦笑いを浮かべながら、ゆっくりと体を起こした。
汗ばんだ額を袖で拭い、息を吐く。
その声は、激しい戦いが終わった後の、穏やかな疲労を帯びていた。
「うん、僕、プリン食べる!」
大和は目を輝かせて立ち上がり、足音を響かせてキッチンへ駆けていく。
小さな背中が、廊下の向こうに消えるのを、二人とも静かに見送った。
部屋に、ふっと訪れた静けさ。
「……ねぇ? アンタ達、いつもこんな遊びしてるの?」
亜樹が、拓也の方を向く。
苦笑いはまだ残っているが、目尻には柔らかな皺が寄っていた。
どこか、込み上げるものを抑えきれないような。
拓也は、床に座ったまま肩をすくめて、照れくさそうに頷く。
「……うん、大体こんな感じでやってるよ」
声は低く、でもどこか誇らしげだ。
視線を逸らしながら、指先で畳の目をなぞる。
「……男の子のお人形遊びって、こんな感じなんだ?」
亜樹の声が、少し震える。
笑いが、抑えきれずに漏れ始めた。
喉の奥から、くすくすと小さな波が広がっていく。
「これ、全然優しいよ? 俺が子供の時は、投げ回してたりしてたよ?」
拓也も、つられて笑う。
頰が緩み、目が細くなる。
昔の自分が、遠くに霞むような、懐かしい照れくささ。
「うっそ〜? 私の子供の頃のお人形遊びって、オヤツごっことかしてたよ? こんな事してるんだ?」
亜樹の笑いが、ようやく声を上げて弾けた。
肩を震わせ、手で口を覆う。
でも、目には涙が少し浮かんでいた——嬉しさの、優しい涙。
「男の子の遊びってのは、こんなもんだよ? 大丈夫だって。大和はちゃんと優しく育ってるじゃん」
拓也の言葉は、静かだった。
でも、そこに込められた確信が、部屋の空気を温かく満たす。
二人の笑いが、重なり合う。
静かなリビングに、柔らかな余韻が広がった。
「プリン取って来た! ちゃんと手も洗ってきたよ!」
大和が、プリンを抱えて戻ってきた。
その手はまだ少し濡れたままだ。
無垢な笑顔が、テーブルタウンの上に、再び光を灯した。




