第39話 ミェースタ
トライデア異界人と接触した翌日の昼。
俺はキョウヤとラーちゃ、ラルミラを王城内の会食部屋に呼び出した。
昨日と違って、トライデアの団長代理ミレイはいない。
俺たち、異世界からの帰還を目的にした仲間だけを集めた作戦会議の時間だ。
俺は女王による筋肉痛で体が思うように動かず、準備に手間取ってしまい予定していた時間よりも遅刻してしまった。
部屋の扉を開けると3人は既に集まっており、何やら話している。
俺抜きで3人がどのような会話をするか気になって扉の裏に隠れバレないように聞き耳を立てる。
悪口とか言われてたら嫌だなぁ。
「ラルミラさん、どうですか……?僕の心理テストの結果は」
「……あなたは責任感が強く、人のお願い事を断れない性格。
だけど自分に困ったことがあっても周囲の人に相談しようとするのを避けるタイプ。
追い詰められたときは、パニックで視野が狭くなって迷惑をかけてしまい自己嫌悪に走る」
「凄い、ほとんど悪口だ!出会ってから全然話してないのに本当にぴったり当たるなんて!」
「そういえばキョウち、会ってスグのときにクレぴーと喧嘩して家出したことあったもんねー!」
ラルミラにかなり酷いことを言われているにも関わらず、キョウヤとラーちゃは大笑いしながら話をしている。
どうでもいいが、心理テストに読心の超奇跡を使うのはアリなのか?
「ねー次ウチの番!!ミラちゃんよろ!!」
「むむむ……まぶしくて読めない。やっぱりラーちゃの心読むの苦手……」
「えーーー!!そこをなんとか!おねがいっ!」
「無理、日光を直視してるのと変わらない……」
「負の感情で読めないってのはなんとなく分かりますけど、眩しすぎて読めないってラーちゃさんめちゃくちゃカッコいいじゃないですか!太陽みたいに元気を与えてくれるってことですよ!!」
「マジでパないってこと!?だったらめーっちゃ嬉しいかも!師匠みたいで最高じゃんそんなの!」
凄い楽しそうだった。
読心の超奇跡に対しても物怖じせず積極的にコミュニケーションできるあの2人は、ラルミラの精神的な救いになっている。
俺みたいな社会に疲れた28歳のおっさんには出来ない。
根明で優しいキョウヤとラーちゃだからこそできることだ。
素直に良いことのはずなのに、なぜか心苦しい。
俺なんか入ってあの雰囲気を壊しても良いのか。
疎外感を感じる……
「あ、クレぴー!来てたんだ」
バレた。
「来てたんですか!今ラルミラさんと心理テストやってたんです」
「サイゴもやる?」
隠れていた扉から顔を出してキョウヤたちを見ると宝石のように輝いて見えた。
だからこそ、こんな理不尽に巻き込まれていることが許せない。
何も持たない俺がすべてを尽くして元の世界に戻す。
「ああ、悪い!盗み聞きするつもりはなかったんだが……心理テストは遠慮しておくよ、さんざん読まれてるんでな」
盛り上がっていた3人も席について作戦会議を始める。
「サイゴさん、話し合いを始める前に1つ良いですか?」
「なんだ?キョウヤ」
「さっき3人で話してたんですけど、チーム名ってあったほうが良くないですか?
ほら、僕とサイゴさん、ラーちゃさん、ラルミラさんって『元の世界に帰る、日本に行く』って同じ目的をもって動く仲間なワケじゃないですか。
折角の出会いなので『絶対僕ら全員が元の世界に行くぞ!』って気持ち、大切にしたいんです」
「言われればそうだが、チーム名か……考えたこともなかった」
元の世界ではリーダー役をやることが多かったというキョウヤらしい発想だ。
「それで考えてみたんですよ。ズバリ『帰還したい組』っていうのは──」
「流石にそのまますぎないか!?」
「でもね、分かりやすいほうが良くない!?って相談したんだよー!」
「……チーム名ぐらい無理にこだわる必要がないとはとも思うが、なんとなく今後に差し支える予感がする。異界騎士団みたいに帰還に肯定的じゃない人たちだっているわけだろ?」
「あ、それもそうですね」
「チーム名が分かりやすいほうがいいのはそうだ。
だけどこの世界の人前で呼んでもトラブルが起きないようなものがいいな」
4人が唸り声をあげてアイディアを考える。
「……ミェースタ」
ラルミラがぼそっと呟いた。
「ミェースタ?どういう意味ですか?」
「ロシア語で『居場所』って意味。私たちはあるべき居場所に行く方法を探してるから」
「いい感じだな。それっぽいし、周りの人が聞いても帰還が目的だとは気づきにくい」
「皆さんと一緒に『居場所』へ行けるように……いいですね!」
「それじゃあウチらはチーム『ミェースタ』!!皆改めてよろしくね!!」
ラーちゃの言葉を聞いて、想いがひとつになった気がした。
俺たちの『居場所を探す』ための作戦会議で、今後の方針を決めた。




