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異世界10冊ノート ~無からノートを作り出すだけの男、流石に無双できない~  作者: ろうそく魔神
セカンドル異界騎士団

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第29話 天敵

 ヘラクの策略によってキョウヤたちと分断された俺とラルミラは炎の魔法使い、リーデッドと相対する。

 明らかに俺のノート創り能力を見越した計画的な分断だ。


 転送された場所は王城の中庭のど真ん中。

 魔法を遮るような障害物は何も無い。

 最悪のシチュエーションだ。


「戦う前にひとつ聞いておきたい!何故ヘラクはそこまで成り上がることに固執する?

  あいつの能力は貴重で、騎士団でも隊長という充分な地位を手に入れてるじゃないか!」

「サイゴ殿、それは簡単な話です。ヘラク殿は隊長などに収まる器ではない。

  あの方はすべての人々を傷や病から救済できる修復の超奇跡(ストレンジ)

  明らかにセカンドルという国、ひいてはこの大陸すべてを統べるべきお方なのです」

「そんなに凄い力なら成り上がるのに戦闘力なんていらないんじゃないか?」

「それは違うのです。この大陸は魔獣によって土地の大半を支配されております。

  その魔獣から領土を奪い返すのに、異界人に最も求められているのは魔獣の掃討能力。

  すなわち戦闘できる超奇跡(ストレンジ)がここでは重要視されるのです。

  世界を変えられる力だというのに、実にくだらない価値観でしょう!」

「お前……」


 リーデッドのヘラクに対する忠誠心は本物だ。

 ヘラクは本気でこの世界を変えられると思っている。

 そして、その理不尽な扱いに怒りを覚えている。

 それは、俺がキョウヤに対する感情と少し似ているような気がする。


「……少し喋りすぎましたね。異界の方への尊敬の気持ちは変わりませんが、ヘラク殿の理想の邪魔になる貴方は排除させていただきます」

「くっ!」


 魔法使いと戦闘になることを、これまで考えなかったわけではない。

 ヘラクたち異界騎士団と衝突する可能性はありえた話だった。

 ただそれが上手くいくかは試したことがない。


「来るよ」

「ラルミラ、下がれ!俺が止める!」

「【炎玉魔法(フレドボル)】!」


 俺が創る【魔導書(グリモア)】はページを切り取り、魔力を流し込み、魔法陣が反応して魔法を発動する。

 ならば『この魔導書のページが白紙だったら』どうなるのか?

 魔法陣で魔法に変換されないなら、『魔力は空白のページに吸収される』んじゃないか?

 ぶっつけ本番、俺の仮説の検証だ。

 豪速で飛来する火球に合わせて、生成した【白紙の魔導ノート】で受け止める!!


「ぐぅおおおお!!!!!!!」


 狙い通りに魔導ノートは豪炎の推進力を奪った。

 しかし、それは一瞬。魔力を吸収しきる前にノートが燃え尽きる。

 駄目だ、()()()()()()()()()()()()()()()

 希望の盾を失った。

 もう避けられない。


「ぐぁあああああ!!!」


 魔法が直撃した爆風で、体が宙に浮く。

 俺は賭けに負けた。

 地面に叩きつけられた衝撃で胸が苦しい。

 熱した大気を吸い込んで肺が灼けるように痛む。

 足に力が入らない。


「サイゴ!」


 ラルミラが俺の方に向かって駆け寄ってくる。


「お前は逃げろよ……」

「君と『2人で戦う』って決めたから、私は逃げない……」

「気持ちだけじゃどうにもなんねぇだろ……!」


 俺とラルミラの超奇跡(ストレンジ)はとても戦える能力じゃない。

 ヘラクの思惑通り、魔法使い1人で充分だった。


「手応えはあったと思ったのですが、まだ息があるとは。流石異界の方だ」


 倒れ込んだ俺たちの方に向かって歩いてくる炎の魔法使い。

 『今度は確実に仕留める』、そう言っているようだった。

 眼の前にいるリーデッドは俺たちを見下ろし、再び杖を構える。


「残念ですがラルミラ殿も抹殺の対象です。私の炎は人を苦しめるものですが、どうかせめて安らかに」


 ああ、このままでは俺のせいでラルミラまで死ぬ。

 俺のせいで正しい人間を()()殺す。

 それは駄目だ。

 そうだった、忘れていた。

 俺はそう決めたはずだ。考えろ!

 ()()()()()()()()


「クソ……!」


 考えろ!俺の魔導ノートじゃ()()を吸収できなかった。炎で燃え尽きるからだ!

 しかし、ヤツの魔導杖(まどうじょう)は俺の【魔導書(グリモア)】と構造は似ている。

 魔力を杖に込め、杖を操作して、魔力を魔法に変換する道具だ。

 そう、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 魔法は吸収できなくても、その源である()()なら【白紙の魔導ノート】で吸収できるんじゃないか?

 だとしたら狙うのは杖から魔力が放たれ、魔法に変換される一瞬だ。

 でもどうやって狙う?

 魔法を唱えるタイミングなんてリーデッドの気分次第だ。

 そんな都合よくタイミングが分かるわけ──


「今だよ」


 ナイスだ、ラルミラ!


「【炎玉魔(フレドボ)──!」

「【魔導ノート】!!」


 杖に向かって魔導ノートを生成する。

 今度の仮説は正解だ。


「魔力が消えた!?」


 炎に変わるはずだったエネルギーは【白紙の魔導ノート】に吸い込まれ、ノートは魔力の塊になって落ちた。

 そして、魔力の塊を使って魔法を使う方法を()()()()()()()()()


「【単純放出魔法(エミレス)ノート】!!!」


 魔導書だが、今度は白紙じゃない。

 すべてのページに単純放出魔法(エミレス)の魔法陣、あらかじめ準備していたものだ。

 丸に棒を1本引いただけの『∅』のような簡単な魔法陣で発動できる基礎魔法だが、それを魔力の塊にぶつけて一気に発動したらどうなる?

 その結果はモリントワームのときに分かっていたことだ!


「ぐぉおおおおああああ!!!!!」


 足元に生成された魔導書から放たれた魔法の集合は間欠泉のように吹き出し、魔法使いを空高く打ち上げる。

 完全に不意をつかれたリーデッドは全身で魔法を受け、空から堕ちる。


「まさか、魔法を打ち消すとは……やはり異界の方は素晴らしい……」


 俺の足の感覚が徐々に戻り、立ち上がる。

 リーデッドは落下の衝撃もまともに喰らい、もう立ち上がれない。

 状況は逆転した。俺たちの勝ちだ。


「……サイゴ殿、1つ聞かせてください。何故、貴方はキョウヤ殿のためにそこまでするのですか」

「それは……」

「ふふ……ラルミラ殿のように心を読まずとも、見ていれば分かります。

 貴方はキョウヤ殿のために帰還の手がかりを探している」


 ああ、バレていたのか。

 そうだ、俺はみっともない理由で『キョウヤを手がかり探しに巻き込んでいる』。


「……キョウヤが、俺の親友に似てたんだ。ひとつ下の、職場の後輩に」

「……親友ですか?」

「ああ、そいつは完璧だった。背が高くてかっこよくて、友達が多くて、ゲームとか釣りとか料理とか多趣味で、仕事もできるうえに俺より出世も早くて、愛する妻もいて……」

「素晴らしい友人、だったのですね」

「ああ、あいつみたいになりたくて色々趣味を始めようとしたり、彼女を作ろうとがむしゃらに頑張ったこともあったけど全然うまくいかなかった。

 ()()()()()()()()()()()()()()


 俺の恥ずかしくて、みっともなくて、ダサすぎて人には言えない理由だ。


「だからそいつに憧れていたし、正直嫉妬もしていた」


 それなのに何故、リーデッドにこんなことを。


「あいつは正しい人間だった。だから幸せになるべきだった。

 それなのに、俺はアイツが苦しんでるのに最後まで気付けなかった。

 間違った上司の、責任を負って、苦しんでた……

 ()()()()()が犠牲になるべきだったのに──」


 嫌になってもう忘れようとしてたのに、キョウヤを見てたら思い出したんだ。


「はは……!やはり貴方と私は似ている。

 自分の信じる()()()()()が、理不尽な目に遭うことに耐えられない……」

「お前ほどかっこいいものじゃない。俺の勝手な自己満足にキョウヤを巻き込んでいるだけだ。

 死ぬほどダサいだろ?」

「それでも私が貴方を尊敬する気持ちは変わりません。どうか、ご武運を……」


 地に伏したリーデッドに背を向けて歩き出した。


「……何してんだ?」


 何故か両手で耳を塞ぎ、目を閉じてじっと待っていたラルミラの肩を叩く。


「サイゴが理由をリーデッドに話そうとしてたから聞かないようにしてた。

 言いたくなったら言うって約束だったから」

「別に聞いてても良かったんだけどな」

「え、じゃあもう一回言って」

「やっぱやめた」

「むー……」


 そんなことより分断されたキョウヤとラーちゃが問題だ。


「キョウヤとラーちゃがそれぞれどこに転送されたか、()()()()?」

「転送前に団長代理(ミレイ)の心を読んだ。キョウヤは路地裏、ラーちゃは祭り真っ最中の中央通りみたい」

「祭り……そういうことか!」


 優先順位は決まった。


「ラーちゃが危ない、急ぐぞ!」

「キョウヤは?」

「恐らく俺たちと同じように、キョウヤの近くにいた山賊たちも一緒に転送されたはずだ。

 多分アイツらがいたらなんとかなる!」


 俺たちは王城から抜け出し、ラーちゃのいる人だかりに向かって走り出す。



【同時刻、トライデアの路地裏】

 ──転送されたキョウヤを囲む、フィロンと騎士2人。

 キョウヤは路地裏に追い詰められていた。


「フィロンさん、どうして!!」

「悪いなキョウヤ、俺だってお前たちの手がかり探しを応援したかったさ!

 それでも、へラクさんに受けた恩はどうしても返さなきゃいけないんでね!」


 短い時間の付き合いだけど、フィロンさんは悪い人じゃないのは知っている。


「僕の前に立ちはだかるなら、倒すしか……」

「操風組、頼む!!」

「「【風球魔法(ゼガルマ)】!!」」


 2人の騎士が唱えた風の魔法は(キョウヤ)ではなくフィロンさんの手元に集まり、それらが大きな風の塊になっていく。


「悪いがじっとしててくれ!」


 吹き荒ぶ風が僕の方に向かってくる。

 やるしかない、僕に直撃する瞬間に合わせて『逆境』の超奇跡(ストレンジ)で──


「え?」


 放たれた風は攻撃じゃない。僕を中心にして囲むように回り続ける。風の檻だ。


「武器も取り上げて置かないとな!」


 腰にぶら下げていた斧に風の刃が当たり、ベルトから切り離される。

 飛んでいった斧は風の渦に巻き込まれて手元からどんどん離れていく。

 しまった、完全に逃げ場がなくなった。


「キョウヤ!!俺たち異界騎士団はお前を()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!

 だから安心してくれ!」

「それは……」


 そうか、フィロンさんの目的は僕を倒すことじゃない!捕まえておくことだ。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 僕は追い詰められずに、詰んでいた。



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