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異世界10冊ノート ~無からノートを作り出すだけの男、流石に無双できない~  作者: ろうそく魔神
セカンドル異界騎士団

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第28話 話し合いの終わり

 太陽が落ちきり、再び王城の会議室に集結した異界騎士団の3人と俺たち3人。

 加えてトライデアの団長代理も同様に立ち会っている。

 ラルミラから聞いた話では彼女はトライデア王国の立会人で万が一の際に城内を取り仕切る権限を持つらしい。


 これから始まるのは俺たち2人が入団を決める裁判。

 しかし前とは違って今回はあらかじめ仕込みは済ませている。


【問題その1、異界人の生存】

【問題その2、キョウヤ自身のモチベーション】

【問題その3、ラルミラの退団を認めてもらうこと】

【問題その4,異界騎士団との遺恨が残る可能性】


 この問題点に関して解決策の提示。

 お互いが持ち合わせているものの結果発表だ。

 今日の昼にラルミラと探していた人も見つかったし、万全のはずだ。


「まず言っておくと才伍(オレ)とキョウヤは異界騎士団に入団するつもりはない。

 これは俺たちが話し合った結果だ」

「まずは理由を聞こうかな?」

「まず俺たち2人はこの世界のことを何も知らないというのは事実だが、協力者としてヴァース人のラーちゃがいる。彼女は冒険者として経験豊富で、元の世界に戻るための手がかり探しにも協力してもらえるんだ。そもそも異界騎士団の助けが無くても生きていける保証がある」

「彼女は単に傭兵かと思っていたが、まさか協力者だったとはね」

「ウチにとって師匠が住んでた【ニホン】はあこがれの場所だし☆

 それに困ってる異界人がいたら助けてあげたいって思うのとか、フツーに当たり前っしょ!」


 ヘラクもこれは予想外だったのか眉を動かし苦笑している。

 そもそもだが、手がかり探しはラーちゃの育ての親であるバァバとも約束していたことで既定路線だったのかもしれない。


「ふむ、ひとまず騎士団なしでも君たちは生きていけると。

 しかしキョウヤ君は『元の世界に帰還する手がかりなんてない』と言っていたじゃあないか」

「それは昨日の話です。あのときは僕も知らなかったんですが、一つだけ手がかりがあります」

「キョウヤ君、それは一体どういうことだ?」

「それは異界騎士団の皆さんと僕たちが接触できたことに関係があります」


 キョウヤが言及しているのは俺たちがセカンドルの異界騎士団と出会ったときのことだ。

 あのときはモリントワームとの戦闘で人手が足りなくなってしまったヘラクたちが、何故森のど真ん中にいた俺たち異界人と出会うことが出来たのだろうか。

 そして、普段は外に出ることがないラルミラがわざわざモリントワームとの戦闘に駆り出されていたのだろうか。


「まさか……」

「そうです。あなたたち異界騎士団は俺たちがあの森の中に転移してきたことを事前に知っていたんじゃないですか?

 僕たちは転移してから1週間、一度も街に行ったことはありませんでした。

 だから僕たちが最近転移してきたことを知っている人なんていなかった」

「ただ1つを除いてな……」


 俺たちがラーちゃやヘラクよりも前に出会った奴らなど、1つしか心当たりがない。


「僕とサイゴさんは転移してすぐに4人組の山賊に襲われたんです。

 異世界に来てから出会った人間なんてその人達しか知らない」

「そして山賊たちがトライデアの街で異界人の噂を広め、それを小耳に挟んだ異界騎士団が森の中にいる俺たち2人を探すために読心のラルミラを連れ出した」

「確かに私が連れ出された時のヘラクの司令は『異界人を探し出せ』だった……」


 さっきまで苦笑していたヘラクがその情報を聞いた途端、険しい顔つきに変わった。


「もし我々が異界人の情報を事前に知っていたとして、それのどこが『元の世界に帰還する手がかり』になるんだい?」

「それは……その山賊たちが何故か、僕たちが森の中に()()()()()()()()()()()()()()()()()からです」

「それは……!!!」

「言っていたよな?異界人がいつこの世界に転移して来るか法則性なんて知らないって。

 でも山賊たちは俺とキョウヤを待ち伏せしていたんだ」

「つまり、僕らが転移してくることを事前に知っていた人間がいるんです。

 今まで誰も分からなかったその情報を知っているなんて、異界人の転移に関わっている可能性が高い」

「君たちはその人物を追うことが『帰還の手がかり』になるということかい?」

「そうです。そして特定の人物を追いかけるなんてことは騎士団に入ったらさせてもらえない。

 だから僕は手がかり探しのために自分の意志で入団をお断りします」

「……キョウヤ君の決意も固まってしまったか」


 俺たち2人が強く主張するたび、ヘラクの顔の影がどんどんと濃くなっていき、机をトントンと指で叩く音が大きくなっていく。


(心がグチャグチャで読みづらいけど、思ったように進まなくて焦ってるみたい)


 ラルミラが俺の方に駆け寄り、ヘラクの心情を読み取って書いたノートの切れ端を手渡してきた。

 どうやら主張の内容にはかなり心当たりがあるらしい。

 残るは問題3と4、このまま押し切ってやる。


「君たち2人が入団を断るのはいいとして、ラルミラ君を引き抜こうというのは感心しないな!

 彼女も異界騎士団の貴重な戦力だ」

「本当にそうか?」

「何だって?」

「確かに読心の能力は有用そうだが、意外とうまく扱えていないんじゃないかって話だ。

 現にラルミラは入団してから即座に周りから隔離され、まともに出歩けなかったと言っている」

「それは彼女を想ってのことさ!心を読む力というのは強力だが繊細だからね。

 マイナスの感情を読み取りすぎて心を壊しては大変だ」

「……それはあなたたちの勝手な思い込み。私の読心は『視界に入れた人間の表面上の心を読む』もの。

 マイナスの感情が表面に出てくることはめったにないし、視線を逸らせば読まないこともできる」

「ラルミラの能力はちゃんと調整のできる能力だったはずだ。

 それなのに異界騎士団がずっと隔離していた理由、それは『万が一にも自分たちが心を読まれたくなかった』からじゃないか?

 なにせ軍事組織だからな。バレたらまずいことはいくらでもあるだろう。

 かといって貴重な超奇跡(ストレンジ)持ちを野放しにして情報が流出したら一大事だし、それじゃあ抹殺しようものなら”異界騎士団のあり方”として内部から反発が出る。

 つまるところラルミラは”異界騎士団”という大きすぎる組織では処理できない爆弾のような扱いだった」

「……何が言いたいんだい?」

「その爆弾を俺たちに引き取らせてほしい」

「それでは我々にメリットがないように思えるが?」

「当然タダでとは言わない。俺たちがラルミラを引き取る代わりに、発見した『元の世界に帰還するための手がかり』はヘラクたち『セカンドル異界騎士団の第5部隊』にのみ優先して共有する。その意味は分かるよな?」

「なるほど、私の部隊の功績にしてやるから超奇跡(ストレンジ)をよこせと。

 先程の『転移を知っていた人物』と接触するには、ラルミラ君の能力が有効に働くからあながち分の悪い賭けでもないと……よく考えたものだね!」


 これでラルミラの加入問題もクリアだ。

 残るは【問題その4,異界騎士団との遺恨が残る可能性】の排除。

 ヘラクの目的は恐らくキョウヤの『逆境』の超奇跡(ストレンジ)だ。

 それを彼は簡単に諦めるだろうか。


「君たちが元の世界に帰りたいという気持ちは良く伝わったよ!!

 しかしね、そもそも我々異界人が何故この世界に来たのか考えたことはあるかい?」

「何だいきなり……」

「何故、超奇跡(ストレンジ)を与えられてこの世界に来たのか、ということさ。

 これには何か意図があるとは思わないかい?」


 明らかに不自然な話題の変え方だった。ヘラクは理屈で説得するのを諦めたらしい。


「異界人はこれまで与えられた超奇跡(ストレンジ)と元の世界の知識を使ってこの世界の文明を発展させてきた歴史があるんだ。

 それに魔獣に支配されたこの大陸の人々を救うには異界人の協力も不可欠だ。

 そう、これは神様に与えられた使命!そうは思わないかい?」

「……それって誰かに頼まれたことなんですか?」

「仕組みの話さ、キョウヤ君。これまでの歴史からしてそう考えるのが自然ということだ」

「勝手に連れて来られて、大切な人から無理やり引き離されることが自然ということはあり得ないと思います」

「何?」

「この転移現象は明らかに不当なんだよ、ヘラク。

 それに元の世界に帰りたいと想っているのは何も俺たちだけじゃない。

 そうだよな?フィロン」

「……それは否定しない。

 俺はもう母親に会うのを諦めていたが、手がかりを探すヤツがいるのは悪いことじゃねぇ、とは思う」

「フィロン君……!」


 『元の世界に帰りたい』と考えていたが手がかりが見つからず諦めていたフィロンのような異界人はこれまで何人もいただろう。

 その悲願を達成しようとしている俺たちにも騎士団と同じような大義がある。

 そしてその大義を支持する人間は騎士団の中にもいた。


「だとしても!君たち数人がこれから頑張ったところで異界人が80年間成し遂げられなかった帰還の手がかりを見つけられるというのかい?

 言っておくがキョウヤくんの逆境の能力は魔獣討伐に活かすべき貴重な才能だ!

 無駄に浪費していいモノじゃない!

 この大陸を救って多くの人間の幸せを掴み取ることができるんだ!

 それにサイゴ君の能力はたかが”ノートを創る”だけの超奇跡(ストレンジ)

 ハズレ中のハズレだ!!この世界で通用するはずがない!」

「お前、逆境と修復の超奇跡(ストレンジ)を組み合わせてキョウヤを自分が成り上がるための道具にしようとしてるだろ?

 ラルミラに聞いたぜ、お前は異界騎士団でも貴重な修復能力持ちだから『魔王討伐』作戦に参加できなかったって。

 万が一にもヘラクが死んだら国は困るから妥当だな」

「僕の推測ですけど、モリントワームの時みたいに僕をナイフとかで意図的に傷つけて逆境能力を発動、戦闘が終わったら肉体を修復する、みたいなことを考えてましたよね。

 多分ですけど、案外うまくいかないと思いますよ。

 僕の能力は心理的な逆境も判定対象になるので『傷ついたら治してもらえる』って思っちゃったらあまり強くならないはずです」

「なっ……!」

「それとサイゴさんの能力はハズレなんかじゃない。

 これまで僕の命を何回も救ってくれた意味のある能力です……!」


 俺とキョウヤにすべての根拠をねじ伏せられたヘラクは沈黙した。

 いつのまにか机を叩いていた指の動きが止まっている。


「何故、分かってくれないんだ……私の力があればこの世界を修復できるというのに……」

「え?」

「この私の力を何故正しく評価できない?

 私ならばこの超奇跡(ストレンジ)で世界を正しく導けるというのに……」


 今まで笑みを絶やさなかった眼から光が消えた。


「君たちの理屈はよく分かったよ。話し合いは終わりだ」

「サイゴ、兵が来る」

「嘘だろ!?」


 会議室の扉が開き、4人の異界騎士団が魔法の杖を俺たちに向けて構える。


「おい、団長代理さん!こんなのありか!?他の国の騎士がこんなところで暴れていいのかよ!」

「私はタダの立会人だからねー、ヘラク君との取引でセカンドル異界騎士団の交渉にトライデアからは手を出さないことにしてるんだ」


 コイツは交渉が決裂したときの保険として、トライデアの異界騎士団と前もって話を付けていた。


 流石に城の中で他国の騎士が武力行使に走るのは想定外だったが、そっちがその気ならこちらも奥の手を使うしか無い!


「クソ!【クローズ】!!」


 ノートの切れ端を収納し、外に待機していたアイツらに合図を出す。

 その瞬間勢いよく窓が割れ、4人の援軍が現れる。


「ガァルさん!」

「よぉ、1週間ぶりだなキョウヤ!」

「狼男だと……!?」


 昼間にラルミラと探していた山賊たち。

 俺が持っている最後の切り札だ。


「ヘラクさん!」


フィロンが叫ぶ。


「手筈通りだ、フィロンと操風の騎士はキョウヤを分断しろ!

 私はラーちゃをやる!やはり彼女の爆発魔法は脅威だ!」


 フィロンと2人の騎士団員がキョウヤを標的にする。

 まずい、こいつらにはキョウヤを無力化する手段がある。


「ガァル!お前ら4人でキョウヤをフォローしろ!」

「おう!」


 あとはラーちゃも助けに行かなければ──


「申し訳ありません、サイゴ殿。あなたの相手は私です」


 ラーちゃとの間に第5部隊の魔法使いが立ちはだかる。

 モリントワームの討伐後に俺と話した、ヘラクを最も尊敬していた騎士団員だ。


「ミレイ君、頼むよ」

「了解、ヘラクさん。殺し合いはいいけど城の中は困るから出ていってねー」


 団長代理が指を鳴らした瞬間、俺たちは城の外に転送され、突然石畳の上に放り出された。

 周囲にはヘラクやフィロン、ラーちゃ、キョウヤの姿はない。


「そういえば名前をお伝えしていませんでしたね、サイゴ殿。

 私はリーデッド。これでもヘラク殿と同じ第5部隊の副隊長です」


 礼儀正しく杖を構える。


超奇跡(ストレンジ)は持っていない、普通のヴァース人ですが炎の魔法を使います。

 あなたの【ノート創り】の天敵でしょうね。」

「クソっ……!」


 完全にやられた、俺たちはヘラクたちが有利になるよう綺麗に戦力を分断された……


「私は異界の方を尊敬しておりますし、あなたにはモリントワーム討伐に協力してもらった恩もあります。

 それでも私はヘラク殿が理想とする世界に立ち会いたい。

 その邪魔となるものには容赦できません」


 当たり前だがノートは炎で燃える。完全に俺の超奇跡(ストレンジ)を封殺するための人選だ。

 俺一人でこの状況は──


「私もいるよ」


 俺の背後には同じように転送されていたラルミラがいた。


「2人で戦えばなんとかなるかも……」

「お前戦えねぇだろうが!」


 リーデッドが杖を向け、俺がノートを構える。

 戦いが始まる。

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