第19話 ストレンジと王国異界騎士団
当初の目的として設定していた『トライデアの図書館』に向けて出発した俺たち3人は川沿いの街道を歩いていた。
トライデアで冒険者として活動するラーちゃ曰くここから歩けば3時間ほどで街には到着するらしい。
「前から想ってたんですけど、その【DDノート】って何書いてあるんですか?」
キョウヤが俺の書いているノートを指さして質問した。
「ああ、これはこの世界で会った人とか物事をまとめてるんだ。異世界だから『Different Dimension』でDDノート。」
「ああ、そういうことなんですね。でも異世界だったら『Another World』で『AW』じゃないですか?『Different Dimension』だと異次元って意味になるんじゃ……」
学生時代の英語なんて赤点スレスレだったのに、背伸びして使うんじゃなかった。
「……AWよりDDのほうが何か語呂がいいだろ?それに俺達からしたら異世界も異次元も対して変わらない。」
「それもそうですね……!」
言いくるめているようだが、実際は年の差で無理やり納得させているようで心苦しい。
そんなしょうもないことを話している間、ラーちゃは話に入ってこず周りをずっと見渡している。
「……てかさ、さっきからウチらのことずっと見てるやついるんだけど。」
「え、魔獣?全然気が付かなかった。」
「違うね、気配消してるから気づかないのも無理ないかも。」
「また山賊ですかね、サイゴさん!!?」
慌てる俺とキョウヤとは対象的に、冷静なラーちゃを見て経験の差を感じる。
「ウチらに何の用?見ての通りビンボーだし、コソコソ狙う意味もないと思うんですケド。」
屋敷を出る前に元の世界の服から着替えているので、見た目で異界人とバレることは無いはずだったが、何かしらの原因で見つかってしまったのだろうか。
最悪の場合を考慮して俺とキョウヤも武器を構える。
「いやー、すまない!実は君たちにお願い事があってどう話を持ちかけるべき様子を見てたんだが、まさかバレるとはね!!敵意はないから安心してくれ!」
茂みから筋肉ゴリゴリのスキンヘッドの男が現れ、我々のほうに向かって堂々と歩いてきた。
武器は構えていないようだが警戒を続ける。
「アンタとは初見のはずっしょ。お願いできることなんて無いじゃんね?」
「そうだそうだ!俺たちは何もできないぞ!」
ラーちゃの背中に隠れて必死にか弱いアピールをする。
「君たち、後ろの2人は異界人だろう?それに魔法使いの女性は冒険者。」
「え?」
少なくとも服装から異界人とバレそうな要素はなくしていたはずだ。
それどころかラーちゃの職業まで、何故バレたかが全く見当がつかない。
「話をややこしくしたくないから単刀直入に話すが、私たちも異界人だ。」
(私たち!?他にも仲間がいるのか。)
その瞬間強い風が急に吹きすさび、木の葉が渦を巻き始めた。
その渦に落ちている影の真上から黒い長髪の男と銀髪の少女が空から舞い降りてくる。
「それで君たちの素性を調べたのは彼女の心を読む『超奇跡』によるものだ。」
「ぶい。」
背の低い少女がドヤ顔でピースをして見せる。
「ストレンジ?」
「ああ、君たちは来たばかりかい?噂には聞いていたが……」
長髪の男が割って説明をする。
「ストレンジってのは、俺たち異界人に与えられた力。いわゆるハンディキャップだ。お前らの『ノートを創る』とか『追い込まれると強くなる』とかそういうのと一緒だ。まぁ、ノートの能力に関しては流石にご愁傷さまって感じだけど。」
「なっ……!」
俺たちの能力までも完全にバレていることから心を読む力は本物らしい。
あらゆる情報アドバンテージを奪われた俺たちは、これから始まる交渉において圧倒的な不利な状況を強いられていることに気づく。
(ハッタリが効かないんじゃとりあえず話を聞くしか無いか……)
「……ざっつらいと。」
いくらキョウヤの能力やラーちゃが凄かったとしても、俺自身に戦闘能力はほぼないし、手の内がバレている状況での戦闘はリスクが大きすぎる。
「それで、俺たちなんかに何の用なんだ?」
「私たちはセカンドル王国の異界騎士団でね。同盟国のトライデアに『モリントワーム』という魔獣の討伐依頼で派遣されてきたんだ。」
「……まさかそれを手伝えってか?」
「話が早いね!!」
確かに納得できそうな話だが、その内容では違和感を感じる。
「いやいや、おかしくないか?お前らわざわざ国に派遣されてきたんだろ?何で見ず知らずの奴に討伐の協力なんかすんだよ?」
国から任命されて、ましてや同盟国のためとなったらそれ相応の実力を持つものが派遣されるはずだ。
見知らぬ3人の協力が必要になるとは思えない。
「それはね、魔獣が想定以上に強くて私たちの部隊が全滅したからなんだ!はっはっはっ!!!」
「……は?」
大男は大きくのけぞりながら大声で笑う。
(何でそんな絶望的な状況で笑ってられんだ。)
「……それは、この人の頭がおかしいから……」
少女がぼそっと呟く。
「おいおい、私は至って正気だよ!!?それに部隊は全滅と言っても、私の『超奇跡』でギリギリ治療できているからね!とはいえこのまま放置しているとアイツらも半日くらいで死にそうだ!」
「「「ええ……」」」
理由を聞いたしてもドン引きである。
「ヒーローとは絶望的な状況でこそ笑うもんだ。アメリカじゃ常識だぞ!?」
「仲間がやられてんのに笑うのは何か履き違えてるだろ、それ……」
「つーか、冒険者どころか王国騎士団レベルでやられてんじゃん?ウチら加わって勝算あるわけ?」
ラーちゃの指摘はごもっともだ。
「ああ、俺たちの敗因は作戦ミスと火力不足だ。俺たち3人はサポート特化の『超奇跡』だから致命傷は与えられなかったが、『逆境に強くなる』能力があれば可能性はある。『超奇跡』ってのはこの世界のルールをぶっ壊せるくらいのイカレた能力だからな。」
「え、ぼくぅ!?」
確かにキョウヤの『逆境』の能力次第ではとてつもない破壊力を出せる可能性はある。
(とすると、俺の能力はアテにされてないのね。)
「サイゴくんも、一応期待してるよ……」
(このガキ、また心読んであがるな……!)
「ふふ、こう見えて18歳。」
(めんどくせー!!!)
心を読まれながら『分かってますよ』感を出して話されるのは想像以上に気分が悪い。
「……話を聞く限りだと、急いで倒さないと怪我をした騎士団の人たちも危ないし、国で討伐指定されるレベルの魔獣が想定よりも強かったってことは『トライデア』の街すらも被害が及ぶ可能性があるってことですよね?」
「その通り!若いのに冷静な分析、それに加えて見たところ優秀な肉体と強力な『超奇跡』!これは将来有望だね!」
大男はニコニコしながらキョウヤの顔を見つめる。
「というわけで3人で『モリントワーム』討伐に参加してくれ!さもなくばここで君たちを殺す!!!」
(結局脅しじゃねーか!!!)
「……がんばろー。」
この世界はやたら逃げられないようになっているらしい。
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