表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異次元10冊ノート ~無からノートを作り出すだけの男、流石に無双できない~  作者: ろうそく魔神
魔導ノート

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/23

第17話 グリモア

 魔導書の複写を予定通り3日間かけて終わらせた。


 更にもう一日かけて予備のノートに魔法陣だけを書き写したノートを5ページ分作成する。


 庭で『魔動カカシ』を相手に組手をするキョウヤを尻目に、作成した()()()()()の動作テストを実施することにした。


「【魔導書グリモア】!」


 ノートの表紙に書いたタイトルを唱えることで、能力でしまっていたノートを現出させる。


「いくぞ!!」


 ノートの1ページ目を切り取り、掴んだページに向けて意識を集中させる。


 丸に棒を1本引いただけの『∅』のような簡単な魔法陣である単純放出魔法エミレスを発動させる。


「うおおおおぉぉぉ!!!」


 ボン!と太鼓を力強く叩いたような音が響き、魔法陣から空気の塊が押し出されたような手応えを感じる。


「はぁ、はぁ……!どうすか!」


「基礎魔法で魔力切れとはね。5才児以下だよ。」


「マジかぁ……」


 魔法は体内中に含まれる魔力を対価にして、大気中にいる目には見えない精霊に杖や魔法陣を介して指示をすること発動される。


 バァバ曰く異界人はこの世界の住人に比べて極端に体内に保有される魔力量が少ないのと、精霊に指示を出す精度が異様に悪いので、魔法を使うのに向いていないということらしい。


 杖で魔法を使う場合は精霊へ指示に使用者の技術が必要で、魔導書の場合は『精霊への指示をあらかじめ書き込んでいる』ことによって魔力さえ流せれば誰でも同じように魔法を使えるとのことだったが──


「魔法を使うだけの魔力がないんじゃ意味がないか……」


 魔法を使い終えたページには魔法陣の部分に穴が空き、再び使うことはできないようになっている。


「手間がかかる割に魔力は使うし使い切り、確かにこりゃ流行らんわけだ。」


 ただし、魔力量が少ない人間でも無理やり使用できる方法はある。


「1回1粒、噛んでから飲み込みな。」


 バァバに手渡された丸薬を口に含み奥歯で噛み砕く。


「苦い……」


 パクチーから清涼感を抜いたような味が口いっぱいに広がり、最悪の気分だ。


「それでも、力が湧いてくるな……」


 緊急用の魔力回復薬。

 通常は魔法の使いすぎで魔力が欠乏した人間に応急処置で使うもの。

 しかし、元々の魔力量が少ない異界人にとっては、ほぼ魔力が全快する代物である。


「魔力欠乏の人間がそれを飲んだところで、すぐに動けるもんじゃないんだがね。器が小さい分満たされやすいからかい?」


「俺に言われても……」


 一度で大量に服用すると強めの目眩、幻覚に加えて内臓への負担が酷くお腹を下すらしい。

 乱用は禁物だ。


「基礎魔法で魔力切れになるならこの魔導書ほとんど使えないんじゃないか?」


「個人差はあるが、魔法を使い続ければある程度魔力量は増えていくはずだよ。あんたの歳から始めてどれだけ伸びるかは知らんけどね。」


「結局強くなんのに時間はかかるのか……」


 こっちの世界でも、いきなり強くなれるなんでオイシイ話はそうそう無いらしい。


 ****


「キョウち、結局斧使うことにしたんだねー。」


「はい、なんというか1番僕に合っているかなって。使っててしっくり来ました。」


 元の世界では剣道部だったので素直に両刃の剣を使おうと考えていたが大柄な狼男用のためか重心が自分に合わず、想像以上に扱いが難しかった。


 それに比べて斧の体重を乗せて叩き切る動きが自分の感覚と一致しており、魔獣を倒した確かな手応えもあった。


「それにしてもこの『魔動カカシ』、めちゃくちゃ強いですね。4日間ずっと戦ってますけど全敗してます……」


 魔導カカシ、元々は畑を魔獣から守るための農具だったのだが、『魔力さえあれば自律戦闘が出来る』という特性に着目し、組手の相手として転用されている。


「ウチもこれで体術の修行してたけどマジ強いかんねー。」


 畑を魔物から守るという設計上、この周辺に生息する魔物より強くなるよう改造されている。

 ()()()()でホッピングのように跳ねる高速移動、腕をコマのように振り回しながら突撃するキリモミ特攻、魔獣よけの悪臭ボール射出、敵の攻撃に反応して重心をずらす自動回避など、シンプルな見た目に反してかなり多機能となっている。

 組手用に出力が落とされているとはいえ、動きそのものは魔獣退治できるレベルの本格仕様だ。


「参考までに伺いたいんですけど、これどうやって倒したんですか?」


「ウチはフツーに魔力でカラダ強化して、重心ずらされる前に爆速でパンチして倒したよー☆」


「そうですか……」


 異界人の少ない魔力ではそもそも魔力による身体強化はできないとバァバは話していた。


「てかさ、キョウちって魔力で強化してないのにバリ動けてるよね。凄くない?」


「それはまあ、元の世界では運動部だったので。」


「でも元の世界じゃ斧持ってバトってたわけじゃないっしょ?魔獣斬るのって結構パワーいるよ。」


「言われてみれば僕、元の世界よりも筋力が上がってる……?」


 これまでの戦闘を振り返ると、『逆境』の能力は自分が傷ついたり状況的にピンチを迎えたときに発動しているようだった。


「キョウちの動き見てるとさ、今までどーりに頑張ろうとしてるんだけどうまくいきませーんって感じする。」


(今まで通り、というのは恐らく元の世界にいた頃の感覚?)


「……異世界に転移した時点で身体能力が上がったりってのはあることなんですか?」


「ウチの知る限りじゃないかなー。元の世界からは肉体に変化ないぽいよ。」


(サイゴさんも運動できるようになった、みたいな感じはしなかったな……)


 自分の能力について、仮説を立てる。


「……異世界に転移したこと自体が、自分にとっての『逆境』と判断されている──」


「なるほどねー!ウチらも魔力で強化したときはカラダの動かし方って変わるんだよね。キョウちも身体能力変わってるなら()()()()()()()()()ほういいよー!」


「自分にカラダを委ねる……」


 自分の『逆境』と向き合う時間を迎える。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ