第13話 ギャルとバァバと木こりのハウス
金髪少女に救出された俺たちは『ウチ来る』の言葉に甘えてついていくことにした。
「僕ら、ノコノコ知らない人について行っていいんですかね……?」
少女に直接聞こえないよう小声でキョウヤが囁く。
「確かにリスクはあるけど何も手がかりがない以上お世話になったほうがいいだろ。敵意はなさそうだし。」
山賊たちの件を受けて『異界人狩り』を警戒せざるを得ないが、少しでも情報を手に入れることができるなら現地人とのコミュニケーションは必要と判断した。
「……それは、そうかもしれませんね。サイゴさんの言う通りです。」
何か引っかかる言い方だが、気になることでもあるのだろうか。
「てかさ、異界人に会うのチョー久々でさ!会えたら住んでたとこの話聞きたいってずっと思ってたんだよねー!
あとウチね、家にバァバも一緒に住んでるんだけどさ。
あ、バァバってはウチの育てのマザーね?
『異界人はもう新しく来ない』って言ってたからホントにもう一生会えないのかなーってテンションサゲポヨだったんだけど、魔物掃除とご飯買いに街に降臨して戻ってきたらオサガオにグルグルにされてるメンズ見つけてヤバタン!?ってドチャクソ焦ってマジ爆シュートしたら『えー!この服どう見てもガチ異界人じゃん!!』ってテンション爆アゲでキタコレー!ってもうハートバクバクのバイブスぶちアゲって──」
少女は何故だか懐かしさを感じる語彙で喜びの感情を爆発させながら喋り続ける。
頼んでもいないのにこちらの様子を一切気にせず話し続ける様はここまで来ると会話というよりは《《語り》》に近い。
「もうウチの家マジ銀河級にワールドワイドだからバァバと2人で住むには寂しくて、『あー誰か家に泊まりに来ないかなー』って思ったらもう渡りにリバーって感じ?だからもう遠慮せずゆっくりしてってーやって感じなの!」
渡りに川だと何も起こってない気がする。
「た、助かります……一応俺らは──」
「あ!そういえば『人に名前を訊くときは、まず赤外線』って言うんだっけ?ウチは『ラーヴシンキ』って言うんだけど、可愛くないから『ラーちゃ』って呼んで欲しいなー!バァバもずっとそうだし!」
さっきから出てくる単語に偏りがあるな。
「あ、お、俺は『クレオチ サイゴ』で、こっちは『サカイ キョウヤ』。よ、よろし
く……ラーちゃ。」
「……よろしくお願いします。」
完全に気圧されながらもコミュニケーションを続ける。
「うん、やっぱり変な名前!後で『クレぴー』と『キョウち』もお話聞かせてね!」
「『クレぴー』と『キョウち』……」
キョウヤも異常な距離感にびっくりしているようだった。
「あ、ついたよー!ここウチん家!」
外観は完全に本で読む中世の貴族豪邸といった感じでデカい庭までついている。
白い2階建ての西洋館は確かに2人で住むには過剰な大きさだ。
****
大きな扉を押し開けて彼女の家に入り、2階の書斎らしき部屋に入る。
「「お邪魔しまーす……」」
「帰ったよー!バァバ!」
椅子に腰掛けた背の低い老婆は、本を読んでいた手を止めて部屋に入る俺たちの方を向く。
「お帰り、ラーちゃ。随分賑やかだと思ったら、まさかお友達かい……?」
「うん!『クレぴー』と『キョウち』でね、さっきそこで会ってお友達になったの!」
さり気なく友達認定されていることには突っ込まないことにした。
「なんとこの人たちね──」
「異界人かい……?」
「そうなの!」
老婆の眉間のシワが更に濃くなった。
「あなたたち、この子に何したんだい?答えによっちゃタダじゃおかないよ?」
「お、俺たちはさっきラーちゃに魔物に襲われてるところを助けてもらって──」
「気安く『ラーちゃ』呼びするんじゃないよ!!」
「ごめんなさい!!!!」
こいつが呼べって言ったんだけどな。
「バァバ!この人たちはさっきウチがオサガオに襲われたところをレスキューしたの!異界からこっち来たばっかの人でね、お話させてほしいってウチから頼んだの!」
老婆は娘の言葉で落ち着きを取り戻す。
「……もう異界人は来ないと思ってたんだけどね。」
「それでね!しばらくウチに泊まってもらおうと思うんだけどいいよね?」
バァバは異界から来た男たちを向いて鋭く睨む。
「……あんたらまさかタダで泊まれるなんて考えてないだろうね?」
体格は自分たちよりもずっと小さいはずなのに、有無を言わせぬ凄みを感じる。
「僕たちにできることであれば!」
「掃除、洗濯、食事の準備!買い出しと薪割りと風呂沸かしと魔獣狩りの手伝い!泊まる間は全部やってもらうよ!!あとウチの娘に手出したら命はないからね!?」
「「や、やらせていただきます!!!」」
異世界生活が始まった。




