表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/5

第一話 転移

初めまして、SeaSarと申します!

今回初めての小説投稿、かつ長編に挑戦してみたいなと思い、投稿させていただきます。


今作品は原神の世界観とストーリーを下地としたものとなっていますが、一部オリジナル要素を取り入れております。


拙い箇所が散見されると思いますが、改善点など有りましたら指摘して頂けると嬉しいです。非常に喜びます。


次話以降も投稿していきますので、どうぞ宜しくお願い致します!


プロローグ

「あー、なんか面白えことないかなぁ」

 高校の帰路の途中、1人の少年桐崎魁斗は、そんな、近頃の若者の多くが抱える悩みを1人ポツリと口にした。

 それに反応したのは魁斗の唯一の友達にして親友の長良長成。

「いやいや桐ちゃんよ、俺とお前がいれば毎日がエブリデイでしょうよ?」

 そう言って長成は朗らかに笑った。

「いやまあ俺だってつまらないって訳じゃねえよ。それよりもなんつーかさ、こう、刺激が足りねーっつうか?」

 魁斗は長成に笑い返してそういった。

 だが、それも仕方のないことなのであった。

 魁斗達が通う高校は地方で指折の進学校である。

 勉強最優先の教育方針のために、学校行事は控えめであり、部活動にもそこまでの活気がなかった。

 どちらかというとキラキラした学校生活を夢見ていた魁斗には学校の雰囲気があまり好きでは無かったのであった。

 これから自分達も流れるように受験生となり、勉強のことのみを考えながら生きていくことを考えると、とてもうんざりする気持ちであった。

 だからこそ、

「あー、なんか面白いことねぇかなぁ」

 またしても、口をついたその言葉。

 長成も魁斗のそういった性格を知っていたのでこれ以上反応する気はなかった。

 やれやれと言った態度で、ため息をつく長成。

 最近の魁斗はいつもこの調子であった。

 どこか廃人じみた顔をする時があり、長成もそんな友を心配せずにはいられなかった。

 だから、今度にでもどこか魁斗と遊びに行こうと思っていた。

 魁斗がいつもの魁斗に戻ってくれることを祈ってのことだ。

 そう考え、長成はあえて明るい話題を振る。

 魁斗もそういった長成の心遣いに気づいていた。

 申し訳ないと思いつつ、魁斗はそれに応じる。

 これが、最近の2人の日常であり、最後の日常であった。




 長成と別れしばらく歩いていると、魁斗は見たことのない建物があるのを見つけた

 いつも通っているはずの道にいきなり現れたそれは、見るからに怪しい様相を呈していた。

 まるでそこにあってはならない様な。

 そんな場所に魁斗は戸惑いながらもそこに入ってみることにした。

 実は、迷うことなく魁斗が未知に飛び込むことはとても珍しいのだ。

 慎重かつ堅実に。それが魁斗のモットーであり、むやみやたらに自らを危険に晒すことなど決してしない男であるはずだった。

 だがここ最近の退屈は、魁斗からそう言ったものさえもうばってしまったのであった。

 かくして、中に踏み込んだ魁斗。

 そこは静謐とした空間で、驚くことに誰も何も無かった。

 あるのは生い茂る植物のみ。古い建物なのか、天井にはヒビが入っていてそこから太陽光が覗いていた。

 神秘的な雰囲気で、魁斗はその雰囲気が気に入った。

 長成も呼んで秘密基地みたいなことを年甲斐もなくやってみたいと思うほどに。

 光が差し込む場所に立っていると、何やら今までの悩みなどどうでも良くなってしまう。

 そんな心地がした。

 その時。

「魁斗」

 聞こえたのだ。魁斗には。

 確かに自分を呼ぶ声が。

「誰だ!?」

 そう叫ぶ魁斗だったが、やはりそこには誰もいなかった。

 それは女性の声だった。

 甘く、透き通るような声で、誰かが自分を呼んでいる。

 だがその声はまるで、誰かが発しているというよりも、頭の中で直接響いている様な感覚だった。

 その感覚に意識を集中させた瞬間、魁斗の意識は急に朧げになっていく。

「な、なんだ、これ、、、、」

 今まで味わったことがないような、壮絶な眠気が魁斗を襲う。

 まるで世界から隔離されるような。そんな孤独感と不安感が魁斗の心を満たしていく。

「あなたは、必要。だから、来て」

 意味がわからない。

 必要ってなんのことだ?

 誰に?どこに?

 そんな疑問は山ほどでるが今はそれどころでは無かった。

 体から力が抜けていくのを感じた。本格的に魁斗は恐怖を感じ始め、一番の疑問をさっきの声の主に必死に問いかける。

「一体何をしたんだよ、、、!お前、、、だ、、れ、、、、だ」

 必死の問いかけに応じられることなく、

 そこで魁斗の意識は闇に落ちた。

 深い深い暗闇の中に。

「成功ね」

 全てが予定調和だとばかりに、甘美な声が誰もいなくなった部屋に怪しくこだまする。

 それを発するのは美しい金髪を湛えた1人の少女。

 少女は顔を安堵に染めて、ほっ、とため息をついた。

 役目は果たされた。無事降臨者は召喚されたのだ。

 こうして、桐崎魁斗はこの世界と袂を分かったのであった。

  


 


 


第一章 


 眩しい。熱い。時々冷たい。

 そんな感覚が俺の意識を呼び覚ました。

 まだ朧げな意識のままに、俺はやけに重い瞼を開いた。

「あ?」

 思わず気の抜けた声が出てしまったが、それも仕方ない。

 なぜなら俺はだだっ広い青空の下で仰向けになっていたのだから。

 照りつける太陽がジリジリと全身を焼き、腕には冷たい感覚。

 何より地面が異様に熱い。目玉焼きでも焼けそうなほどに。

 慌てて鉛の様な体を起こして、あたりを見回す。

 そこは案の定、砂浜であった。

 眼前には大海原が広がっているが、船などの人工物は見当たらない。

 その海水は澄み渡っていて、沖縄あたりの海を彷彿とさせる。

 さらに見回すと、東には森に続く道があった。

 どうやら文明はある様だ。良かった。

 かくして冷たい感覚の正体は海水。舐めてみるとちゃんとしょっぱいね〜・・・・・ってそうじゃない!!

 思わず現実逃避をしようとしてしまった。

 まず、だ。

 なんで俺はこんなところにいるんだ?

 さっきまであのロマン溢れる秘密基地チックな場所にいたのに。

 必死に記憶を辿ろうとするとズキリと頭が痛む。

 どうも前後の記憶が曖昧だ。

 これじゃあ何が起こったのかすらわからないではないか・・・・

 仕方ないから今は他の確認をしよう。

 まず、腕はついてるし足もある。

 そして服もさっきのままだ。

 どうやらどうにかなったのは俺の記憶だけらしい。

 俺は一抹の安堵感を噛み締め、さらなる状況理解に努める。

 ここはどこなのかということだ。

 それを知るべく、俺は少し歩いてみることにした。

 さっき見えた森に続く道の方向へと。

 ジャリジャリと音を立てながら砂浜を歩いていくとやはりそこには道があり、そして中に繋がっている森はかなり鬱蒼としている。

 かなり広いのはみて撮れて、抜けるのはかなり億劫に感じた。

 これは反対方向いってみるかぁ、と引き返そうとしたその時。

 俺は発見してしまう。

 森の中で、異形の怪物が自身の体躯とほぼ同等はあろう巨大な斧を片手に彷徨っているのを。

「なんだよ、あれ・・・・」

 俺は絶句してその場で立ち尽くしてしまった。

 それが良く無かった。

 なんとその怪物は俺の方を見ると、獲物を見つけたとばかりにこちらに走ってきたのだ。

 その速さは推定時速40キロメートル程。とてつもない勢いで迫ってきた。

 あぁ、終わった。

 これは間違いなく終わった。

 さっさと逃げれば良かった。

 そして今更気づいたがここは地球ではないな。

 あんな怪物が彷徨いているほど地球は危険な星じゃない。

 ということは俺は転生?いや転送?されたのか。

 なんだってこんな目に。

 転送されて早々ってどうなってんだよ。

 もっとマシな場所にしとけよな全く。

 状況に反して、頭はとても冷静だった。

 死が間近に迫っているのにこんなに冷静なのは多分諦めがついたからだろう。

 人間、死を前にすると案外諦めが早いんだなぁ。

 そんなことを考えているうちに、奴が後10メートルくらいのところにやってきた。

 ああ、もういっそ思いにー

「ヴォオオオオオオオオ!!!!!」

「うわあああやっぱり死にたくねええ!!!!」

 奴が斧を振りかぶる動作をすんでで見切り、俺はギリギリその一撃を躱すことに成功した。

 さっきまでの余裕はどこへやら。俺は全く生への執着を捨てきれていなかったようだ。

 あぁ危なかった。死ぬかと思った。

 俺が今の一撃を躱すとは思っていなかったようで、怪物はその息を隠そうともせず荒らげている。

 近くで見るとより恐怖が増した。

 獰猛な声、筋骨隆々な肉体、禍々しい仮面はより正体不明感を湛えている。

 特筆すべきはその異様な巨大を誇る斧であろう。

 切先にはべっとりと血がついていて、新鮮な生き血であることを伺える。

 おそらく直近に俺の前にも犠牲者がいた模様だ。

 だが、俺は次の犠牲者になるつもりは毛頭ない。俺は諦めが悪いもんでね。

 さっきあっさり諦めてた奴が何言ってんだと思うかもしれないが、できる限りの抵抗はしてみせるさ。

 とは言っても俺には避けるしか術がない。

 なんとか奴の隙を突いて逃げる!

 これが俺の唯一の生存ルートだ。

 そのためには・・・・とにかく避けまくる!!

 俺は集中力を今までで一番高めたと思うくらいカチ上げた。

 次の一撃がきた。

 さっきと違い、助走がついてない分勢いは遅い。

 化け物は斧を振り回す様にしてこちらへ振るってくるが、反動を制御しきれていないからか、振り終わりに大きな隙があった。

 そこからも同じような動きの繰り返しで、単調なものに思えてきた。

 ・・・・これは意外にいけるのでは?

 俺は振り終わりを見極め、一気に駆け出した。

 森の中へ全速力で入って行ったのである。

 怪物の振り終わりから次の初動まで5秒ほどの

 ラグがあるのを俺は見抜いており、それに例外はなかった。

 しかも今回のタイミングは奴に逃げたのを悟らせない角度での走りだしであったため、奴が気づくまでの時間も考えれば、

 10秒は堅い。その時間さえあれば森を抜けられると俺は確信していた。

 なぜなら森に入って気づいたが、この森実は全く広くなかったのである。

 全長100メートル程。

 見掛け倒しとはこのことで、入り口からでは角度的に出口が見えなかっただけなのであった。

 俺は一気に勝ちを確信し、自己肯定感に浸っていた。

 そして、渇いていた心が満たされていくのを感じた。

「正直こんなに危ないのは御免だが、あの生きながら死んでいたみたいな日常よりはずっとマシかもな」

 ふと、俺はこんなことを口走っていた。

 絶望的状況からの脱出。これが俺にかつてない刺激をもたらしたのである。

 この感覚をくれたこの世界も悪くないように思えてきたのだ。

 そんなことを考えているうちに無事に出口に到着した。

 魔物はもう追ってきては居なかった。

「っしゃああああああ!!!!」

 俺は喜びのあまりそう漏らした。

 いや、だってさ、あのクマより遥かに危険であろう怪物から見事逃げ切ったんだぜ?

 こんなの誰でもできることでは無いだろ??

 ましてやただの高校生だった俺が成し遂げたのだから、もはやこれは偉業だ。

 俺は自画自賛を溢れんばかりにしてやった。それほどまでに、あの状況から逃げ切った自分を誇らしく思ったのであった。

 さて、流石に100メートルでも全速力で走ったら息も絶え絶えだ。

 丁度良いところにあるあそこの木陰で休むとするか。

 多分、他に魔物はいない。

 いたとしてもあいつ程の威圧感を放つ存在なら一度遭遇しているから気づくだろう。

 さて、では休みますか。

 俺は木陰に向かって歩き始めた。

 その瞬間。

 森の方から「ドオオオオオオオン」と爆音が轟いた。

 何事かと振りむくも、そこには何も居なかった。

 違った。上だ。

 空からこちらに向かって真っ赤に燃える斧を振りかぶりながら突っ込んできたのは、

 さっき撒いたと思われた怪物だった。

 俺は避けようと必死に体を捻るが、遅すぎた。

 え?死ぬ?

「ちょっとまっt」

 俺は成す術なくその場で両手を前に出して防御体制をとる他なかったのであった。

第二話も投稿しておりますので是非!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ