年末年始
日の続きだから特別なことはない、はず。
なのに大晦日から新年にかけてそわそわしてしまう。
「明日の仕事面倒すぎる……」
「ほどほどに頑張れ」
「新年から仕事ってこと自体むりだもんーー」
まぁぼくも面倒じゃないときなんてあまりないけど。
仕事が生きがいとは言えないし生きるためにこなしてる感じかも。
「アラームつけた?」
「つけたよー、5:30」
本当はお休みだったら日の出を見に行きたかったな、初詣の屋台いきたかった、とかぽそぽそ文句をいう彼女はかわいい。
ていうか初詣のメインって屋台じゃないのに。
「お雑煮作っとくから帰ってきたら一緒に食べよう」
「お餅ひとつで」
「うん、焼いてからだよね」
去年はふたりとも休みだったからたくさん寝て、昼からちゃんとしてたけど。
今回は普通にパンにスープに目玉焼きにしよう。
そのかわり夜ご飯でお正月っぽくしたらちゃんと新年じゃない?
実家に帰ればおせちとかも出してくれるだろうけど、それは距離とか関係とか考えると少しだけしんどい。
「来年はインフルエンザ蔓延しないでほしいー」
「来年どころか毎年でいいよそれ」
ぼくの方のアラームもチェックする。
彼女より15分だけ早く起きてせめて温かいご飯くらいは用意したい。
「もう寝とこっか」
ぼくよりだいぶ小さい彼女の頭を腕にのせてホールドする。
スマホを見る時間あったら少しでも寝かせたい。
「……寝ない子したい」
「明日きついでしょ」
「…………せめて…新年迎えるま、で」
もうすでに言葉があやしくなってる。
年末年始に忙しい職種ってこうなるよな、とぼんやり常夜灯にさらされる彼女の耳元に新年になったら言うから、と伝えた。
とたんに安心したような規則正しい呼吸音。
ふ、と笑いそうになるのをこらえる。
信頼しきってるのって嬉しい。
彼女に光が当たらないようにスマホをぼんやりと操作しながら年が変わる瞬間に小さな声で。
起こさないように。だって言うとは伝えたけど起こすとはぼく言ってないし。
「あけましておめでとう、それと」
これはまた起きてるときにも伝えるから。
そのときに返事をちょうだい。
「今年も愛してる!」