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13① ー婚約者ー

「騒ぎがあったと聞いた」


 次の日の夕方、ファビアンが一日遅れでそんな話をしに部屋にやってきた。


「部屋に勝手に入り込んだ警備の騎士たちが、部屋の中を荒らしたのです。私が何か悪いことをしたのだという情報が入ったとかで。冤罪でしたので、厳重に抗議しました」

「そうらしいな。女子寮が騒がしかったという話を聞いた。騒いだだけですぐに追い払われたと聞いている」


 女子寮の話を誰から聞いたのか。それはつまり、マリエルに聞いたということだろうか。

 言葉に気を付けた方が良いだろうに。うっかりが過ぎる。


「お前も、護衛騎士を付けた方がいいんじゃないか? 前からそう思っていたが、ラグランジュ家の問題ゆえ、口にしなかったが」


 そんなこと思ったことあるのか? 聞き返しそうになるが、あまりに今さらな言葉で、どうでもいいとスルーする。


「ファビアンにはしっかりとした騎士が付いておりますからね。そういえば、街でも連れておりましたし」

「ああ。いつも側にいるからな」


 問われたことを理解していないか、いつも通りアメリーの紅茶を啜って、ふと顔を上げる。


「街? どこの話をしているのだ?」

「ファビアン、聞きたいことがあったのですけれど、このままいけばファビアンは王位継承権第一。王に何かあればすぐにあなたが王です。どう思われます?」


 ファビアンの浮気話などどうでもいい。ヴィオレットはファビアンに一番聞きたかったことを問うた。


「何だ。急に。王になりたいかと言われれば、なる気なんてない。俺は、兄上に従う者だとばかり思っていたから。兄上の代わりに王になるなどと」

「ですが、あなたが次の王です」

「お前は、そんなことしか言えないのか?」

「では、王位を軽んじていると?」

「そういう意味ではない!」

「ですが、もうジョナタン王子はいらっしゃいません。その気概はないということですか?」

「————っ。それとこれとは話が別だ!」


 ファビアンは怒鳴りつけてカップを叩きつけるようにテーブルに置いた。がちゃりと大きな音と共に紅茶が床にまでこぼれる。突然自分の嫌いな王位の話をされて、顔が真っ赤だ。

 何か捲し立ててくるかと思ったが、ファビアンは憤慨した顔を見せたまま立ち上がると、何も言わず部屋を出ていった。


 護衛騎士のコームがこちらに頭を下げて後を追う。


(コームは、やっぱりただの監視なのね……)


 ファビアンを諌めることのない護衛騎士だと思っていたが、ファビアンに付いて歩く盗聴魔法のようだ。彼の情報は王妃に届いているのか、王に届いているのか。


 あの騎士だけではない。学院には王妃のスパイがたくさんいるのだから、自分が調べる以上に王妃が知っていて当然だった。エディとは別に協力者がうろついている。


「毒は、マリエルの仕業かしら……」

「あの女が、カミーユ様の暗殺未遂を行って、それをヴィオレット様になすりつけたってことですか?」

「その可能性も出てきたわね。私の部屋と彼女の部屋は階も違うし、近くもないのにわざわざ見学に来ていたのなら、何か起きることを知っていたかもしれないわ」

「でも、どうやって部屋に毒を入れられたんでしょう」

「それよね……」


 エディは魔導士が移動して侵入したか、警備騎士が毒を隠したのではないかと疑っていた。部屋に入り込んだ時にこっそり落として別の者に探させた。警備騎士の中に犯人の仲間がいるのかもしれない。


 エディは次がないように、ネックレス以外にも部屋の防犯グッズなどをくれて、今は窓や扉を壊して勝手に入り込めないように結界が張られている。魔導士が移動して入られないような結界も作られていた。

 そんな結界が張れる魔法グッズなど、その辺の貴族では手に入れられないのだが、王妃の知り合いだけあるか簡単にそんな物をよこしてくる。


(使わずに済めば良いとは言われたけれど……)


 ブレスレットやネックレスだけでもありがたかったのに、エディへの礼が膨らむばかりだ。


「それにしても、ファビアン王子はまだ王になる気がないんですね」

「未だ理解していないのよ。ジョナタン王子が亡くなってもうすぐ二年だというのに、自分は継ぎたくないからいつまでも駄々をこねてもいいと思っているの」


 既にファビアンに権利が移っている。その重要さを理解していないのだから。

 よほどカミーユの方が国について考えている。


 カミーユがデキュジ族の血を持っていても、王になる方法があれば良いのだが。

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