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ヤンの章 ⑨ アゼリアの花に想いを寄せて

「ヤン、待ってたよ」


応接室に行くと、ベンジャミン先生が待っていた。先生は蝶ネクタイに縦縞にダークブラウンのラウンジスーツを着用していた。先生はヨハン先生達と同じこの教会の出身で唯一、子爵家の爵位を持っている。


「え?ベンジャミン先生…口髭を生やしたんですか?」


久しぶりに会うベンジャミン先生は口髭を蓄えていた。


「ああ、そうだよ。年若い弁護士だと…色々舐められてしまうことがあってね。だから貫禄をつける為に口髭を生やしてみたんだけど…似合うかな?」


恥ずかしそうに僕を見た。


「そうですね…」


ベンジャミン先生は今年36歳になるけど、とても若々しく見えて20代前半にしか思えなかった。そのせいで裁判の時等は軽んじて見られるのが嫌だと僕にこぼしていたことがあったっけ…。


「うん、よく似合っていると思いますよ」


「そうかい?ありがとう」


ベンジャミン先生が笑みを浮かべた。


「とりあえず座ってくれ。ヤン。君に大事な話があるんだ」


「はい…」


大事な話って何だろう…?


首を傾げながらソファに座ると、シスターアンジュが2人分のハーブティーを運んできてくれた。


「二人共、どうぞ」


「うん、ありがとう」

「ありがとうございます」


「ごゆっくりどうぞ」


「ありがとう、シスターアンジュ」


ベンジャミン先生に声を掛けられ、シスターアンジュは頭を下げて部屋を出て行った。



「それにしてもシスターアンジュは美人だよね」


ベンジャミン先生はシスターアンジュが部屋を出ていくと、いきなり僕に言ってきた。


「え?!」


突然の言葉に驚く。


「本当に勿体ないよ。まだ30歳なのに…神様に誓いを立てて、貞潔の誓いを立ててさ。ヤンもそう思わないかい?」


「え…そ、それは…」


思わず言葉に詰まっていると、ベンジャミン先生が言った。


「あ、今の話は軽く聞き流してくれればいいよ。別にシスターアンジュの事で話をしにきたわけじゃないからさ」


「は、はい」


「実は話というのは他でもない。ヤン…僕の養子にならないかい?」


「えっ?!な、何故突然…」


いきなりの話に驚いた。


「うん。実はね…僕は今もこの先もずっと誰かと結婚することを考えていないんだ。でもそうなると僕の代でルイス家が途絶えてしまうんだ。その事を思うと…折角僕を引き取って育ててくれた今は亡き義父母に申し訳なくてね…だから優秀なヤンを養子にしたいと思ったんだよ。どうだい?僕の養子になって大学に進学したいと思わないか?出来れば僕の養子になってヤンにも同じ弁護士を目指して欲しいんだよ」


「え…?で、でも…あまりにも突然の事で…」


するとベンジャミン先生が言った。


「ヤンは高校を卒業後はどのみち教会を出なければならないだろう?『ハイネ』にはとても良い法律大学があるんだ。僕を引き取ってくれた義父も僕もその大学を出ている。どうだろう?悪い話じゃ無いと思うんだけどな?」


「『ハイネ』の大学へ…?」


メロディから僕は一緒に『ハイネ』へ行こうと誘われていた。



これは…偶然の話なのだろうか―?


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