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ヤンの章 ⑥ アゼリアの花に想いを寄せて

 2人で厨房に立ち、料理を始めることにした。


床の上に置かれたザルの中にはじゃがいもが沢山入っている。


「そうだな…じゃがいもがたくさんあるからポタージュを作ろうか?メロディ、玉ねぎの皮を向いてくれるかい?」


「ええ、任せて。それ位は出来るから」


メロディは得意げに言うと、玉ねぎの皮を剥き始めた。その隣でじゃがいもの皮を剥いているとメロディが声を掛けてきた。


「ねぇ、ヤン」


「何?」


「後2ヶ月で私達卒業よね?」


「うん」


「…本当にレストランの厨房で働くの…?」


「そうだよ」


今更メロディは何を聞いてくるのだろう?チラリとメロディを見ると必死になって玉ねぎの皮を向いている姿が目に写った。


「メロディ…。2ヶ月後には『ハイネ』で1人暮らしを始めるんだろう?ローラさんは心配していない?料理が出来なくて本当に大丈夫なの?」


「な、何よ!りょ、料理出来なければ外食すればいいだけよ。パンだってパン屋で買えるもの」


「うん…だけど、それだと栄養が偏るんじゃないかな…?」


「ひょっとして…心配してくれている?」


メロディが僕を見上げた。


「それは勿論心配しているよ。幼馴染なんだし」


「幼馴染…。それだけ?」


ポツリとメロディが呟く。


「そうだよ?あ、メロディ。せめてポタージュ位は作れるようになったほうがいいよ。教えてあげるから自分で作ってご覧?」


「ええ〜…」


メロディは不満そうに口を尖らせるも、言った。


「わ、分かったわよ…」


「よし、やろう」


 そして僕とメロディの料理作りが始まった―。



30分後―



「出来たわっ!」


メロディが嬉しそうに声を上げる。


「うん、そうだね。ほら、味見してご覧よ」


お玉で小皿に出来上がったポタージュをよそってメロディに差し出した。


「いただきまーす」


メロディはふうふう息を吹きかけてポタージュを覚ますとゆっくり飲んだ。


「…どう?」


「美味しい…凄く美味しいわっ!」


喜ぶメロディに僕も満足だった。


「良かった。もう作り方は覚えたよね?それじゃ早速皆で食べよう?」


「ええ」




「おまたせ、カミーユ」


メロディが焼いたパンとポタージュ、それにローラさんが作っていってくれたサラダをトレーに乗せてリビングで待っているカミーユの元へ運んだ。


「へぇ〜おいしそうなポタージュだ。ヤンが作ったのか?」


「いいえ、作ったのは私よ。隣でヤンに教えてもらいながらね?」


「げっ…姉ちゃんの手作りかよ…」


露骨にカミーユが嫌そうな顔を見せる。


「何よ?文句があるなら食べないでくれる?」


「わー!それだけは勘弁!腹ペコなんだよっ!」


「大丈夫だよ。沢山作ったから皆で食べよう」


僕の言葉にカミーユが嬉しそうに言う。


「やっぱヤンは優しいよな。誰かさんとは大違いだ」


目の前に料理を置くとカミーユは嬉しそうに言う。


「フン。何よ。ヤンは誰にでも甘いのね」


メロディは口をとがらせながら椅子を引いて座った。


「さて、それじゃ皆で食べようか?」


僕も着席すると2人に声を掛けた。


「ええ」

「そうだな」


そして3人での食事が始まった。




****


「うんめぇ!やっぱヤンは料理が最高だ!」


ポタージュを飲みながらカミーユが嬉しそうに言う。


「だから、作ったのは私だってば!」


しかし、カミーユは聞く耳を持たずに言う。


「きっとヤンならすぐに『リンデン』で一番のシェフになれるよ」


「それは褒め過ぎだよ…」


苦笑すると、メロディが言った。


「でも…残念だわ。ヤンは学年で1番頭がいいのに進学しないなんて…。『ハイネ』には有名な大学だってあるのに…。ねぇ、今から大学受験目指したら?試験は来月だからまだ間に合うじゃない」


「そんな、無茶言わないでくれよ。大体受験勉強だってしてないし…仮に受かっても授業料を支払えないよ」


「授業料なら奨学金制度を使えばいいじゃないの。『ハイネ』の大学には奨学金が使える大学があるのよ?」


奨学金…。凄く魅力的な言葉だけど…。


「ごめん、やっぱり『ハイネ』にはいけないよ。だってアゼリア様のお墓がここにあるんだから」


「…」


するとメロディが青ざめた顔で僕を見た―。







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