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ケリーの章 ㉖ 待ちわびていたプロポーズ

 翌朝―


目が覚めたけれども、まだ身体が少し熱っぽかった。時計を見ると午前6時。


「起きなくちゃ…ヨハン先生のお食事の準備をしないと…」


けれどもどうにも身体の言うことが効かない。その時、扉をノックする音が聞こえた。


「ケリー…起きているかな?」


遠慮がちなヨハン先生の声が聞こえてきた。


「はい、今目が覚めたところです」


返事をすると少しの間が空き、再びヨハン先生が声を掛けてきた。


「中へ…入ってもいいかい?」


「はい、どうぞ」


するとカチャリと扉が開かれ、ヨハン先生が姿を現した。


「おはよう。ケリー」


「おはようございます」


ヨハン先生は部屋に入ってくると言った。


「まず、熱を測って見ようか?」


「はい…」


ヨハン先生から体温計を預かり、口に咥えて熱を測ると華氏99.5(37.5度)だった。


「まだ熱があるね。今日も休んでいるんだよ?食事くらいは僕が用意するし、今日は土曜日で診療所は午前中で終わりだからね。ジョアンさんも手伝いに来てくれるから大丈夫だよ」


「ですが…」


私がここに置いてもらうにはヨハン先生の役に立たなければならないのに…何もしないでいるなんて私の存在価値が無くなってしまう。


「ケリー」


突然ヨハン先生が私の手を握りしめてきた。


「ヨ、ヨハン先生?」


「ケリー。お願いだ。これ以上…心配させないでくれないか?アゼリアのお墓の前で倒れているケリーを発見したときには…心臓が止まりそうになってしまったんだ」


「ヨハン先生…」


先生はそこまで責任感を感じていらっしゃるんだ…。


「兎に角、今日はゆっくり休んでいるんだよ。診療時間が終わったら僕は出掛けてくるけど…後でローラさんが来てくれることになっているからね」


「え…?」


ヨハン先生がお出かけ…?まさかデート…?


「ケリー。どうしたんだい?やっぱり具合が悪いんだね?後でミルク粥を作って持ってくるからゆっくり休んでいるんだよ?」


「はい…ありがとうございます」


「気にすることは無いよ。ゆっくり休むといい」


そしてヨハン先生は部屋を出ていった。




 その後、ヨハン先生は言葉通り本当にミルク粥を持ってきてくれた。私は1人で部屋で食事をすると、再びベッドに横になった―。



ボーン

ボーン

ボーン



部屋にある振り子時計が鳴り響き、その音で私は目が覚めた。


「う…ん…」


ゆっくり目を開けて、時計を見ると時刻は12時を示している。


「え…?もうこんな時間?」


まさかお昼になるまで目が覚めなかったなんて…。身体はすっかり楽になっていた。この調子なら起き上がっても問題無さそうだ。


ベッドから起き上がり、着替えを済ませると私は階下に降りていった。


「あら!ケリー」


厨房に降りるとローラさんが驚いたように私を見た。ローラさんは厨房でお昼の準備をしていたところだったのだ。


「こんにちは、ローラさん」


「ケリー…もう大丈夫なの?ヨハン先生からはまだケリーの体調は良くないと聞いていたけど…」


「はい、もう大丈夫です。これもヨハン先生のお陰です。先生はまだ診察室ですか?」


時計を見ると12時半になっている。いつもならもうそろそろ厨房に現れる時間だ。しかし、ローラさんの次の言葉に私は凍りつくことになる。


「ヨハン先生なら…お見合いに向かったわ」


ローラさんは申し訳なさげに私に言った―。


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