アゼリア&カイの章 ⑲ また…会えたね(アゼリアside)
カイとラルフを見送った後、私はケイトの部屋に遊びに来ていた。2人でお店で買ってきたワインを飲みながら、ホテルから見える美しい夜景を眺めていた。
「でも本当に『リンデン』へ来てからは驚きの展開だったわ〜」
ケイトがワイングラスを傾けながらしんみりと言った。
「ええ、本当にそうよね。でも…ケイトが150年前も私の側にいてくれた話…とても感動したわ。あのね、今だから言うけど…貴女に初めて会った時から懐かしく思っていたの」
そして私は手にしていたワインを飲んだ。
「え?アゼリア…。その話本当?!実は私もね…貴女に会った時からとても懐かしい気持を抱いていたのよ」
ケイトが身を乗り出してきた。
「明日はカイと2人でデートに行くんでしょう?楽しんできてね〜」
「え、ええ…ありがとう。でも…何だか悪いわ。貴女と一緒に旅行に来たのに…」
「何言ってるの。私は明日ラルフと出かけるんだから気にしないでよ」
「そうね…ところで貴女から見て、ラルフさんてどんな人かしら?」
「私の問にケイトは少し考える素振りをした後…口を開いた。
「うん、面白い人よね。ちょっと何処か天然ぽいところが好感持てるわ」
「え?天然…?そうなの?」
私はあまりラルフとは会話をしていないので、あまり分からなかった。
「うん、あのね…『医術歴史記念館』に入りたくても中々入れなかったら、いきなり手を繋いできて『2人で行けば怖くない』なんて言うのよ。何だかおかしくなっちゃったわ。…すごくいい人よ」
「そう…。確か前世では彼が私と貴女を助けてくれたんだものね。」
「ええ。あの人は私達の恩人て事よね。それで明日は2人で運河を流れる渡し船にのって、『リンデン』の町を観光するツアーに誘うつもりなの」
「それはとても楽しそうね?」
「アゼリアはどうするの?」
ケイトが尋ねてきた。
「私は…カイと違って、前世の記憶がほとんど無いの。だから150年前の2人の思い出の場所を回ろうって約束をしているわ。少しでも思い出すことが出来ればいいのだけど…」
思い出したい…。私は息を引き取る時、自分が最後何を考えていたのか…。後悔は残していなかったのか…。
「どうしたの?アゼリア?」
ケイトが首を傾げて私を見た。
「ううん、明日が楽しみだなって思って」
「そうね、楽しんできてね。私もそうするつもりだから」
そしてケイトは少しの間、考え込む素振りをすると言った。
「ねぇ、アゼリア。明日は…無理にここへ戻ってこなくていいからね?」
「え…?」
ケイトが意味深に私を見て笑った。
そしてその言葉の意味を…私は翌日、知る事になる―。