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アゼリア&カイの章 ⑱ また…会えたね(カイside)

 22時―


僕達はホテルのエントランスの前に立っていた。


「それじゃ、又明日ね」

「明日10時に来るよ」


僕とラルフはアゼリアとケイトに手を振った。


「ええ、おやすみなさい」

「おやすみなさい」


アゼリアとケイトも手を振ってくれる。

そして僕達は2人に見送られて、セントラルパークホテルを後にした―。




****


「なぁ、良かったのか?カイ」


2人でタクシーに乗り込むとラルフが声を掛けてきた。


「え?良かったって…何が?」


「いや、本当はあのままアゼリアの側にいたかったんじゃないかなって思ってさ」


「な、な、何を言い出すんだよ。ラルフ」


あまりの突然の発言に思わず顔が赤面してしまう。


「いや…だってもう2人はめぐり逢って恋人同士になったんだろう?しかも150年前は夫婦だったわけだし…」


「だけど…それはあくまで150年前の話だよ。それに実際は僕とアゼリアは今日初対面なわけだし…」


すると不意にタクシードライバーが声を掛けてきた。


「お客様…随分興味深い話をしていますね…もしよければその話、詳しく教えて頂けませんか?」


「え?」

「は?」


あまりの突然の話に僕とラルフは驚いた。


「あ、すみません。何だか盗み聞きするような真似をしてしまって…実は私、不思議な話が大好きなんですよ。特に…前世の話には大いに興味がありましてね…」


タクシードライバーの男性はバックミラー越しに僕を見た。


「…え?」


その顔にはどことなく見覚えがある気がした。


「どうしたんだ?カイ」


ラルフが不思議そうな顔をして僕に話しかけてきた。


「い、いや…」


(そんな、まさか…)


心臓がドキドキしてきた。


「あ、あの…運転手さんはずっとここに暮らしているのですか?」


「いえ、元々は違う場所に住んでいたんです。学生時代旅行で偶然ここ『リンデン』を訪れて…何だかとても懐かしい気持ちになって、卒業後に移り住んだのですよ。それでここの町並みがとても好きなのでタクシードライバーとして働き初めて、8年になります」


「そう…なんですか…」


一方のラルフは不思議そうに僕と運転手を見比べている。


「ところで、『アゼリアの丘』へは行きましたか?」


不意に尋ねられた。


「え、ええ。行きましたけど…。何故それを…?」


「あの丘はここ『リンデン』の観光場所として有名ですからね。あの丘に登ってプロポーズすると必ず成功すると言われているんですよ。実は私もそうだったので。あ、そう言えば本日…1人の女性をあの丘まで乗せているんですよ」


「へ〜そうなんですか。運転手さんは結婚されてるんですね」


ラルフが会話に入ってきた。


「ええ、去年結婚しました。結婚式を挙げた場所は…あの教会なんですよ」


え…?あの教会…?


「妻は少々気が強いところもありますが…でも本当は気が利くしっかり者で、頼りになるんですよ」


何故か運転手さんは自分の奥さんの事まで話しだし…ラルフをチラリと見ると声を掛けてきた。


「貴方はここ『リンデン』でこちらの方の様に運命の相手に出会えましたか?」


「え?お、俺ですか?!う〜ん…運命の相手というか…どうなんだろうな…?」


ラルフは首をひねっている。…ひょっとすると彼は今ケイトの事を考えているのかもしれない。


その時―。


タクシーがホテルの前で止まり、運転手がこちらを振り向くと言った。


「到着しましたよ。旧『ハイム邸』に」


その顔を見て僕は確信した。


「あ…!ま、まさか…貴方は…!ヨ…ヨハン先生…?」


「えっ?!う、嘘だろうっ?!」


ラルフが目を見開いた。


「貴方は…150年前と全く外見が変わっていないんですね。でも…この人は変わったようだ」


彼…ヨハン先生は僕とラルフを交互に見つめた―。








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