アゼリア&カイの章 ⑮ また…会えたね(アゼリアside)
辺りはすっかり暗くなっていた。
「カイ…私、もうホテルに戻らないといけないわ。ケイトが心配するかもしれないから…」
『アゼリアの丘』から見下ろすリンデンの町並みはすっかり夜になっていた。
「うん、そうだね。きっと心配しているよ。僕もラルフのことが気になってきたし…そうだ。アゼリア、僕も君とケイトが宿泊しているホテルについていってもいいかな?それで合流したら、次に僕とラルフが宿泊しているホテルに行こうよ。4人で食事に行かないかい?」
カイの提案はとても良い物に思えた。
「ええ、そうね。それがいいかもしれないわ」
「よし、それじゃ行こう。アゼリア」
カイは立ち上がると私に右手を差し出してきた。
「ええ。行きましょう」
私は彼の右手をしっかりと握りしめた―。
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カイと2人で『アゼリアの丘』を降り、通りを走るタクシーをつかまえると2人で一緒にタクシーに乗り込み、すぐに行き先を運転手に伝えた。
「10番街にある『セントラルパークホテル』までお願いします」
「かしこまりました」
そしてタクシーが走り出すと、左の席に座ったカイが黙って私の左手を握りしめてきた。
カイ…。
カイの方を見ると、優しげな瞳で私をじっと見つめてる彼の姿があった。私はカイの右肩に頭を乗せ…無言でタクシーの車内で寄り添った。
私達の間には…言葉なんかいらなかった―。
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「「え…?」」
「「あ…」」
カイと2人でセントラルパークホテルに到着した私達はフロントに置かれたソファで向かい合わせに座っているケイトと…見知らぬ男性を見て固まってしまった。
「ラルフッ!一体こんなところで何をしているんだい?」
カイがケイトの向かい側に座る男性に声を掛けた。
え…?ラルフ…?それじゃ…この人が…マルセル様…?
「あ!カイッ!いや、実は…」
ラルフと呼ばれた男性は慌てたように立ち上がり…私とカイがしっかり手をつなぎあっている様子を見て、驚いた様に私を見て…次に声を上げた。
「あ、アゼリアッ!」
「え…?な、何故私の名前を…?」
ひょっとしてこの人はマルセル様の記憶が蘇ったのだろうか?
「アゼリアッ!ねえっ!聞いてくれるっ?!」
ケイトが私に駆け寄って来ると…カイを見た。するとカイは目を見開いてケイトを見つめている。
「あ、あの…?」
ケイトが私の側に来ると、カイを見上げた。
「ケリー…?ケリーなのかい?」
「え…?な、何故その名前を…?」
するとケイトが首を傾げた。
「え?ケイト。もしかしてケリーと言う名前に心当たりがあるの?」
すると今度はラルフさんが声を上げた。
「カイッ!それに…アゼリア…?2人は何か事情を知っているんだろう?俺と彼女に分かるように説明してくれよ」
「「…」」
私とカイは顔を見合わせ…そしてラルフとケイトの方を向くと、頷いた―。