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アゼリア&カイの章 ⑭ また…会えたね(カイside)

「アゼリア…」


キスをやめて、そっとアゼリアを見つめるとその目には涙が浮かんでいる。


「アゼリア…?何故泣いてるの…?」


「ご、ごめんなさい…。私…貴方が大切な人だって事は分かっているのに…何故なのか理由が分らないの…。こ、この場所が思い出の場所だって事も…頭では理解出来るのに…本当に…ご、ごめんなさい…」


「いいんだよ。アゼリア…分らないのも無理はないよ…」


僕はすすり泣くアゼリアを強く抱きしめた。

そうだ、ぼくの様に前世の記憶が全て残っている方がおかしいんだ。現にラルフだって前世の事は記憶の片隅におぼろげながら留めているだけに過ぎないのだから。


「カイ…」


アゼリアは緑の大きな瞳を涙で濡らしながら僕を見つめる。前世の記憶なんて関係ない。僕の愛する女性があの頃と全く変わらない姿で…声で、同じ名前で戻って来てくれたのだから。


「アゼリア、聞いてくれるかい?僕と…アゼリアの話を…」


「うん、聞くわ。教えてくれる…?」


「勿論だよ。それじゃ…あの木の下に行こう?」


 僕は1本の大きな木を指さした。その木はアゼリアが静かに息を引き取った時にもたれかかっていた巨木だった。あの時も十分大きかったけれども、150年の時を経た木はさらに立派に成長していた。


 アゼリアの手を引いて、2人で巨木の下に座ると僕は静かに話し始めた。

150年前の僕とアゼリアの…そして大切な仲間たちの話を―。




****


 

 『アゼリア』の丘の上から見上げる空が茜色に染まり、宵の明星が輝き始める頃…僕の長い話は終わった。


アゼリアは時々、涙を流しながら僕の話を聞いていた。そして話が終わって暫くの間は悲しげにすすり泣いていたけれど…やがて顔を上げると僕に語りかけてきた。


「それでは…今、カイと一緒にいるのが…マルセル様なのね?」


「うん、そうだよ」


アゼリアの肩を抱き寄せ、僕は頷く。


「それなら私と一緒に『リンデン』へ来たケイトは…ケリーなのかもしれないわ。実は昨日ね、当時のヨハン先生が診療所を開いていた場所が今は医術歴史記念館になってりいるのよ?私は中へ入ったんだけど、ケイトは泣き出して中に入ることが出来なかったの。『ヨハン先生』と言って泣いていたわ」


「え?そうなのかい?でも…ひょっとするとケイトはケリーなのかもしれないよ。アゼリアが亡くなった3年後に2人は結婚しているんだよ。とても仲の良い夫婦だったんだ…」


「そうなのね…」


アゼリアは僕の身体にもたれかかると言った。


「私も…カイの様に前世の記憶を完全に取り戻せればいいのに…そうすれば貴方と同じ記憶を共有することが出来るのに…」


「いいんだよ、アゼリア。そんな風に思わなくても。今、こうして僕達は再び巡り合うことが出来たんだから…僕は今とても幸せだよ」


「私も…とても幸せよ」


そして僕達は固く抱きしめ合い…再びキスをした―。


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