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アゼリア&カイの章 ⑨ また…会えたね(アゼリアside)

「アゼリアーッ!!早く早くっ!バスが来ちゃうわ!」


『リンデン』の空港に到着し、荷物を受け取った私とケイトはバス乗り場へと急いでいた。


「ね、ねえ…ケイト。何もそんなに慌てる事無いんじゃないかしら?」


大きなキャリケースを引きずりながら私は隣を歩くケイトに尋ねた。


「だって、早くホテルに荷物を置いて観光巡りしたいんだもの」


ケイトは笑みを浮かべて私を見る。


「フフ…ケイトって旅行好きだったのね」


「うん、そうなのかしら…?でも何故かここ『リンデン』は私にとって特別思い入れがあるのよ…こう、何だか…胸がキュッて締め付けられるような…不思議な感覚」


「そうなの…?」


生憎私にはその様な感覚は全く湧いてこなかった。ただ「カイ」「マルセル」と言う名前を聞いた時は、激しく感情を揺さぶられたのだけど…。




  空港を出ると、正面出入り口にバス停が何箇所もあった。


「アゼリア、私達の乗り場にバスが到着してるわ。急ぎましょう!」


「え?ええ。そうね」


私達は更に急ぎ足でバスへと向かった―。




****


「はぁ〜…バスに間に合って良かったわ…」


2人で並んで座り、バスが発車するとケイトが安堵のため息をついた。


「ええ、良かったわ。ホテルのある10番街までは30分位かかるみたいね」


私はタブレットを操作しながらケイトに話しかけた。


「…」


しかしケイトからは返事が返ってこない。


「ケイト?どうしたの?」


見るとケイトはじっとバスの中から窓の外を見つめている。その目はとても真剣だった。

一体何を見ているのだろう?


私も外に視線を移すと、ケイトは町中を流れる運河をじっと見つめていた。運河には数隻の渡し船が浮かんでいる。


「あら、あれね?ケイトが話してくれた運河の渡し船って」


「…あるわ…」


ケイトがポツリと呟く。


「え?どうしたの?何があるの?」


するとケイトは真剣な眼差しで私を振り返ると言った。


「ねぇ、アゼリア。デジャヴュって信じる?」


「え…?確かデジャヴュってあの…『既視感』の事?初めて見るのに、何処かで見たり、体験したことがあるような…不思議な感覚の事よね?心理学で以前教わったわね」


するとケイトが頷く。


「うん。それよ。私…今まさにデジャヴュ状態よ。あの船の上で誰かと食事した事がある気がする…。でも余り楽しめなかった気がするの…きっとその人との食事は気乗りがしなかったのね…他に誰かの事考えていた気がするわ…」


「まぁ…そうなの?それで?良かったら続き、教えてくれる?」


ケイトの話に興味を持った私は先を促した。


「え…?こんな私の話…信じてくれるの?」


ケイトが目を見開いて尋ねてくる。


「ええ、勿論よ」


すると―。


「アゼリアッ!」


ケイトが私に抱きついてきた。


「ど、どうしたの?」


「ううん…嬉しくて。こんな私の変な話を真剣に聞いてくれようとするんだもの…。アゼリア、大好きよ!」


「ええ…私も貴女が大好きよ。ケイト」


私はそっとケイトの背中に手を回した―。

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