アゼリア&カイの章 ⑦ また…会えたね(アゼリアside)
ケイトと別れた後、再び大学の図書館へ戻った私は様々な文献を漁った。そしてようやく得られた情報はカイザード・アークライト医師と、マルセル・ハイム医師は共に『リンデン』の出身で、2人の共通の大切な女性を白血病で亡くしてしまい、治療法を研究する為に医師を目指したと言う事が分った。
『リンデン』…。
そこへ行けば何か手がかりが得られるかもしれない。幸い、後半月で大学は夏休みに入る。
夏休みに入ったら…すぐに『リンデン』へ行ってみよう。きっと、そこへ行けば…何かが変わる。
そんな予感がした―。
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「ええっ?!夏休みは『リンデン』へ行くですって?!」
翌日、大学のカフェでケイトにその報告をすると何故かとても驚かれてしまった。
「え?ど、どうしたの?何かまずかったかしら?」
アイスコーヒーを飲みながらケイトに尋ねた。
「別にまずいって訳じゃないけど…まぁ、言わなかった私も悪かったかしら…。実は夏休みは私の実家に来ない?って誘おうと思っていたのとよ」
ケイトはため息交じりに言うと、ストローでアイスティーを混ぜた。
「そうだったの?…ごめんなさいね。あ、でも『リンデン』へ行って2人の医師の事が分れば、もうそれで用事は終わりだから…その後ならいつでも私は大丈夫よ?」
するとケイトは途端に目を輝かせた。
「本当?!だったら私も一緒に『リンデン』へ行くわ!確かあそこは古い町並みが沢山残っているし、町の中には運河が流れていて渡し船があるのよ。その船では食事も出来るんですって!」
「え?そうだったの?貴女って随分『リンデン』の事について詳しいのね。ひょっとして行った事があるの?」
「え?ううん。行った事無いわ。…でも言われてみれば確かにそうよね。どうしてこんなに詳しく知っているのかしら?あ…もしかしたら私、旅行が好きだから過去に調べたことがあるかも…うん、きっとそうに決まっているわ」
そしてケイトはチョコレートケーキを口にした。
「うん。ここのケーキ、ちょっぴりほろ苦くて美味しい~」
「そうね。だったら『リンデン』に行ったら2人で観光もしましょう。数日滞在した後、貴女の実家にお邪魔させて貰うわ」
「本当?嬉しいわ。でもアゼリアは自分の実家には帰らなくてもいいの?」
「大丈夫、ちゃんと帰るわよ。何と言っても夏季休暇は3カ月もあるんだもの。実家に帰るのは一番最後で大丈夫よ。家族とはほぼ毎日電話で話しているし」
「そうよね。アゼリアは家族と仲がいいものね」
「あら、ケイトだって仲がいいんじゃないの?だって御両親は大学病院で知り合った職場結婚じゃないの」
私はチーズケーキを口にした。
「う~ん。どうかしら…お互い仕事が忙しいから職場で顔は合わすけど、家では顔をあまり合わせていないような夫婦だからね~」
「フフ…何?それ?」
そして、その後も私たちはいろいろと夏休みの計画を立てるのだった―。