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70 ノアの力2

 アウリスがエリアスを抱き上げると、エリアスは嬉しそうに父親の首に抱きついた。


「お義兄様、ただいま戻りましたわ。一ヶ月もお手伝いできなくて申し訳ありませんでしたわ」

「おかえりライラ。精霊神様から聞いていたから大丈夫だよ」


 アウリスがお茶の準備を指示している間に、乳母はエリアスのおもちゃを片付ける。そしてアウリスからエリアスを預かると速やかに部屋から出ていった。

 普段から執務室へ出入りしているのか、手馴れた様子だ。


 アウリスに席を勧められたライラとオリヴェルは、ソファーへと並んで座った。


「執務室へは、エリもよく遊びにきますの?」

「最近はなかなか遊んでやる時間もないから、せめて一緒の空間にいようと思ってね」


 どうやらアウリスは忙しい間も、しっかりと父親をこなしていたようだ。

 微笑ましく思いながらも、ライラは一ヶ月前のことを思い出した。

 皇太子夫婦からエリアスを引き取りたいと言われて、アウリスは沈んた様子だったけれど。


「ところで、エリの件はどうなりましたの? 今こちらにいるということは?」

「皇太子が、今すぐでなくても構わないと言ってくれたんだ。だから、エリが成人してから自分で選ばせようってことになったよ」

「それでは、これからもエリと一緒に暮らせますのね」


 今回の件は、オルガが引き取りたいというよりは、シーグヴァルドの計画に必要だったということなのだろうか。

 シーグヴァルドは計画を急いでいないのか、それとも考え直したのか。

 どちらにしても、アウリスが悲しまずに済んだのでライラはほっとした。


 ライラはお茶を飲んでから、続いて自分の結婚問題がどう決着したのか聞くことにした。

 ノアからは大雑把にしか聞けなかったし、とりあえず誤解を解きたい。


「ところで、わたくしの件ですけれど……、ノア様の説明では少し誤解があったと思いますわ……」


 そう切り出すと、隣に座っているオリヴェルがまた笑いをこらえるようにライラを見る。

 わざわざ蒸し返す必要もなかったのではと気がつき、ライラは恥ずかしくなる。


「ライラちゃん、誤解ってどんなかな?」

「もう……。オリヴェル様は最近、意地悪ではありませんこと?」

「そうかな? ところであの質問はしてみたの?」

「……まだですわ」


政略(・・)でなければ?』という質問はできずじまいだけれど、今朝はノアの気持ちがライラよりも『熱い』ということを知ったばかり。

 それをオリヴェルに話すつもりはないけれど、オリヴェルは何かを察したのか「へぇ」と意味ありげに微笑む。


 二人のやり取りを見ていたアウリスは、微笑みつつも目は怒っているように見える器用な表情を浮かべた。


「俺にもわかるように教えてくれないかな。精霊神様とライラの間には何かあるの?」

「何もありませんわ! 帝国からの結婚をお断りした理由も、ノア様と一緒にいるか、帝国へ嫁ぐかの二択を迫られただけですもの」

「そうだったんだ。俺はてっきりライラが精霊神様のことを好きなのかと思っていたよ」


 にこりと微笑んだアウリスは、お茶を優雅に口へ運ぶ。

 やはりそう誤解している者がいたようだ。本当は誤解ではないけれど、本人に伝えてもいないのに周りからそのように思われたくない。

 自分で言い出しておいてなんだけれど早く話題をそらしたいライラは、本題を切り出すためオリヴェルに視線を向けた。


「それで、帝国にはどう伝えましたの?」

「精霊神様の意向だと伝えたよ。皇太子は、ライラちゃんと二人きりでお茶をしたのがよほど満足だったのか、今回はおとなしく引き下がると言ってくれたよ」

「そうでしたの。対立関係にならずに済んだようで安心いたしましたわ」

「ただ、今後も皇帝をなだめてほしければ、定期的にライラちゃんと会わせろとは言っていたけどね」

「それくらいでしたら、構いませんわ。シグは友人ですもの」


 シーグヴァルドは次期皇帝だ。これからも継続的に交流を持てば、両国にとっても良い効果が得られるかもしれない。


 そう思いながらティーカップに手を伸ばそうとしたが、視線に気がつきライラはアウリスを見た。

 彼はカップに口を寄せたままライラをじっと見ている。口元が見えないせいか、その視線が少し怖い。


「……お義兄様?」

「親しくもない男と二人きりになるのは、関心しないな。ライラは公爵令嬢でもあるんだから、もう少し行動には気をつけてね」

「はい……。気をつけますわ、お義兄様」


 アウリスがライラを叱ることなど滅多にないので、ライラは少し驚いた。

 けれどシーグヴァルドがライラの思っている通りの人物でなければ、危険だったのかもしれない。

 あの時はどうしても聞きたいことがあったので、オリヴェルにも無理を言ってしまったけれど、やはり軽率な行動だったようだ。


「まぁまぁ。ライラちゃんでなければ聞き出せなかった情報も得たし、あまり叱らないであげなよアウリス。それよりライラちゃん、他に聞いておきたいことはない?」


 オリヴェルはライラを気遣うように話題を振ってくれたので、ライラは感謝しつつ微笑んだ。


「ノア様の意向とはいえ、帝国との戦争になるかもしれませんでしたのに、国王陛下はよくご決断なさいましたわね」

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