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69 ノアの力1

 ライラが目覚めると、いつものようにノアがライラを抱きかかえて微笑んでいた。

 ここは神殿のようだ。いつのまに戻ってきたのか、ライラが記憶を思い出していると。


「あれから一ヶ月ほど経った」

「そんなに……!」


 ノアの発言にライラは青ざめた。ノアによって強制的に眠らされてから一ヶ月も経っていたなんて。

 シーグヴァルドの帰国時期は、とうの昔に過ぎてしまっている。

 ライラが眠った後、ノアは帝国に対して何をしたのだろうか。

 武力的な解決だったらどうしようと思っていると、ノアがライラの頭をぽんっとなでた。


「心配するな。話し合いで解決した」

「本当ですの?」

「あぁ。『ライラが俺と離れたくないと言うから、嫁にはやらん』と伝えたら、後は国王とオリヴェルがいいようにしてくれた」


 爽やかに微笑むノアに対して、ライラは「へ……?」と変な声を出してしまった。

 確かにノアから二択を迫られて一緒にいたいと答えたけれど、その言い方では誤解を招くではないか。

 ライラの顔は、一気に熱を帯びていく。


「それですとわたくしが、一方的にノア様を好きだと誤解されてしまいますわ!」


 ノアの服にしがみついて訴えると、ノアは不満そうな顔をライラに向ける。


「ならば俺と一緒にいるのは嫌なのか?」

「そういう意味では……。ノア様はどうですの……? わたくしのことを……」


 聞きたいけれど、聞きたくない。そんな気持ちから言葉を途切れさせると、ノアは柔らかく表情を緩める。


「いつも言っているだろう。ライラは俺にとって、最も大切な存在だ」


 そう言いながら大切そうにライラを抱きしめるノア。


(はぐらかされてしまったわ……)


 四年経っても何も変わらないノアにもどかしさを感じつつも、彼から伝わってくる想いの熱さが答えなのではと、勝手ながら思ってしまう。

 忙しない心臓の音がノアに伝わってしまわないか心配になっていると、ノアが呟く。


「ライラの心が温かい」

「え?」

「ライラも感じているだろう? 俺の心を。ライラが俺の種を飲んだことで、俺達は繋がっているんだ。ライラの心は、日に日に温かさを増している」


 ライラが『想いの熱さ』と認識している感覚のことを言っているのだろうか。

 今までノアの熱さを一方的に感じているつもりだったけれど、どうやらライラの心もノアに伝わっていたようだ。

『日に日に』と言われ、ライラは心当たりがありすぎて恥ずかしくなる。


「いっ……、一ヶ月も眠っていたのでしたら、仕事が溜まっておりますわ!早く公爵邸へ参りませんこと!?」


 突き飛ばすようにノアから離れたライラ。

 ノアは不満げにライラを見つめるけれど、そんな顔をされても困る。


 ノアは、ライラの心を『温かい』と表現したけれど、ライラに伝わってくるノアの心は『熱い』のだ。この四年間、ずっと。

 しかしこの『熱い』という感情に『大好き』などとは書かれていない。

 結局ノアの想いがどういった類のものなのか、わからないままだ。

 ものすごく前進来た気分のライラだったけれど、何も変わっていないとため息をついた。







 公爵邸へと移動したライラとノア。

 出迎えてくれたオリヴェルに公爵邸の様子を聞くと、アウリスはライラがいなくて大忙しのようだ。

 いつもならアウリスに来てもらうけれど、今日はライラが出向くことにした。


「先ほどまで抱き合っていたのに、なぜまた避ける……」

「のっ……ノア様! わたくしが寝ている間、ノアさまが抱きかかえているのはいつものことですわ」


 アウリスの執務室へは行けないノアは、あろうことかまた誤解を招くような発言をする。

 ライラは慌てて取り繕ったけれど、オリヴェルの笑いをこらえる表情を見ていられない。

 一刻も早くこの場を立ち去りたいライラは、足早にアウリスの執務室へと向かった。



 かつては父の執務室だったけれど、現在はアウリスが使用している。

 ノックして執務室へ入ると、まず初めに目に飛び込んできたのは、ソファーに座ってお絵かきをしているエリアスと乳母だった。


 エリアスはライラに目を止めると、瞳を輝かせながらソファーから滑り降りる。そして、てとてとライラに駆け寄ってきた。一ヶ月ほど見ない間に、彼はまた大きくなった気がする。

 ライラが屈みこんで待ち構えていると、エリアスはライラの首にぎゅっと抱きついてくれた。


「ラーラ!」

「エリ、久しぶりね。元気にしていたかしら」

「うん! あのねパパがね」


 久しぶりに会う甥っ子は、アウリスからお土産にもらったおもちゃの話をしたくて仕方ないようだ。うんうんと聞いていると、アウリスもこちらへとやってくる。

 一ヶ月ぶりに会うアウリスは、少しやつれているように見えるけれど、そのやつれ具合にすら色気を感じるのは気のせいだろうか。

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