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63 ノアとライラの関係2

 ここでアウリスとの結婚話が再浮上するとは思わず、ライラは動揺した。

 一度エリアスの母親となることを断っているのに、自分の都合でアウリスに頼るなんてできない。

 気まずさを感じながらアウリスに視線を向けると、一瞬だけ目が合ったアウリスにすぐ逸らされてしまう。

 アウリスはハールス公爵に顔を向けると、無理をしているように微笑む。


「俺は、一度ライラを裏切っています。夫には相応しくないでしょう……」

「殿下はあの女に、たぶらかされていたのではありませんか? 殿下とライラ様は、ご関係が変わられても支え合っているように見受けられますが」

「……ライラに任せます」


 アウリスとしても、一度断られた相手とは結婚したくないのかもしれない。

 沈んだ表情のアウリスを見つめていると、ライラの隣でオリヴェルが口を開いた。


「皆様、大前提をお忘れではありませんか? ライラちゃんと結婚するには、ノア様に関する条件も呑んでいただく必要があります。若い令息ならば今から離宮で迎えることも可能ですが、すでに社会的地位も得ている方には難しいと思います」


 そういった意味では、ノアとアウリスとの関係は随分と特殊だ。

 ライラとの事情で二人は親しくなってしまったけれど、同じように他の貴族と親しい関係を築くわけにはいかない。


 そうなると、いよいよライラの結婚相手はいなくなってしまう。


 皆が考え込んでいると、国王とオリヴェルは顔を見合わせた。

 意味深にうなずき合ってから、国王は席を立ってノアの元へ向かう。


「精霊神様はどのようにお考えか、お聞かせ願えないでしょうか?」

「ライラの人生は、ライラが決めれば良い」


 布の向こうから聞こえてきたノアの簡潔な答えに、国王の顔は曇る。


「……精霊神様とライラ様がご結婚なさるのが、最も平和的かと思われますが」


(ノア様と……?)


 神と同等の存在にはなったけれど、ライラが人であることには変わりない。国王の提案は大胆すぎではないだろうか。

 けれど日々感じるノアの愛情と、昨日の出来事。

 ノアがどう思っているのか、ライラはずっと気になっていた。


 少し沈黙が流れた後、布の向こうから小さくノアの声が聞こえてくる。


「俺は……、ライラと政略(・・)結婚するつもりはない」


 その言葉を聞いて、ライラは両手を強く握りしめる。


 自分で思っていたよりも、ノアに多くの期待をしていたことに今更ながら気がついてしまった。

 この四年間、ノアに溺愛されてきた自覚は大いにある。けれどその溺愛は、恋愛感情ではなくオリヴェルの言う通り従者愛だったようだ。


 ライラはこの場から立ち去りたい気持ちを抑えて、国王に微笑みかけた。


「そうですわよ。神であるノア様には、わたくしなど相応しくありませんわ」

「いや……、そういう意味では……」


 布の向こうから微かにノアのつぶやきが聞こえてきたけれど、ライラは聞こえないふりをした。

 どう慰められても、ノアがライラと結婚したくないという意思に変わりはないのだから。慰められるだけみじめに思えてしまう。


 ライラが話し合いを再開するよう催促し、再びライラの結婚相手について話し合われた。

 けれど結局、候補はオリヴェルとアウリスしか現実的ではなく。

 ライラにも考える時間が必要ということで、話し合いは終了した。





 マキラ公爵に提案され、本日の夜会はオリヴェルにエスコトートしてもらうこととなったライラ。

 二人で入場すると会場からは『やっぱり』という雰囲気が漂ってくる。

 会場にいるのが気まずくなったライラとオリヴェルは、早々にバルコニーへと逃げ込んだ。


「うちの当主のせいで、ますます噂が広がりそうでごめんね」

「気になさらないでくださいませ。今日はお義兄様も調子が優れないようでしたから、エスコートしていただけて助かりましたわ」

「そういえば、ライラちゃんのパートナーになるのは初めてだね」

「そうですわね。今までお義兄様以外の方と夜会へ参加したことがあまりないので新鮮ですわ」


『あまり』というよりアウリス以外では、ノアと出席した成人の儀での舞踏会、シーグヴァルドに急遽エスコートされた昨日の晩餐会、そして今日オリヴェルと参加しているこの夜会だけ。

 改めて思うと、結婚相手を探すどころか異性と交流した経験がなさすぎる。

 世の中には夜会のたびにパートナーを変えている令嬢もいるというのに、自分は人気がないのだろうかとライラは小さくため息を吐いた。


「どうしたの、ライラちゃん。やっぱりアウリスと来たかった?」

「ごめんなさい、違いますの。わたくし結婚の件で、少し自信をなくしてしまいましたわ」

「自信?」

「えぇ。ノア様にははっきりとお断りされてしまいましたし、お義兄様とオリヴェル様も……」


 いつも親しくしている三人に、断られたような形となったライラ。

 少し冗談交じりに愚痴ってみるつもりだったのに、オリヴェルは焦ったようにライラの両手を取った。


「それは誤解だよ!」

「え……?」

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