表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/102

27 ノアと信者の祈り3

 ノアにエスコートされて入場したライラは、シンっと静まりかえる中をノアと共に進んで行く。

 精霊神が出席する式に相応しい厳かな雰囲気だけれど、皆の顔は驚きに満ち溢れているのがよくわかる。

 ノアが貴族の前に姿を現すのは、国王の代替わりの際におこなわれる加護を授ける儀式のみ。それも、姿を認識できないよう幻術魔法が掛けられているが、今のノアは魔法をかけない状態でライラをエスコートしている。

 前回の儀式に出席した貴族ですら、ノアの本当の姿を見たのは初めてとなる。


 今回はライラが神と同じ容姿を手に入れたと示さねばならないので、特別にノアの存在を見せることにしたのだ。

 この提案をされた際に、なぜいつもは幻術魔法をかけているのか気になったライラは、オリヴェルに尋ねて見たが。

『ほら……、ノア様って俺達が想像している神とは少し違うというか。言動がちょっとね……』と、思いのほか残念な理由を伝えられてしまった。

 確かに想像していた神の威厳などは感じられないけれど、ノアと一緒にいるのは楽しいとライラは思っている。


 そんなノアだけれど、エスコートする姿が思いのほか優雅でライラは少し驚いた。


「ノア様はエスコートがお上手ですのね。ご婦人方がうっとりしていらっしゃいますわよ」

「上流階級の作法はひと通りユリウスに教え込まれたのでな」

「そうでしたの。ノア様の意外な一面を拝見させていただきましたわ」

「ライラは……、他の女性のようにはならないのか?」

「え?」

「いや……なんでもない」


 成人の儀は王家のそれと同じ流れでおこなわれたが、今回はライラが従者となった経緯を国王が語る流れが追加された。


 国王が語って聞かせたのは、仰心の厚いライラの前にある日、精霊神ノアが姿を現したこと。

 ライラを気に入った精霊神は彼女を傍に置くため、神と同じ色の髪の毛と同じ色の瞳、そして同じだけの命を与えたこと。

 ライラは婚約者だったアウリスとお別れをして、従者となる決心をしたこと。


 事実とは少し異なるが、王家がアルメーラ家を軽んじたのではないと印象付けなければならないので、アウリスとの婚約破棄はライラの事情ということになった。

 オルガが婚前に妊娠した事実があるので、これで納得する者は少ないだろう。それでもライラと王家が円満解決したことを示さねばならない。


 当時のライラの状況を考えれば、どちらにせよ公爵家存続のためにアウリスはオルガと結婚しなければならなかった。王家がアルメーラ家を軽んじたのではないことは、ライラも理解している。

 それにこの件に関しては国王陛下が頭を下げてくれたので、ライラも従者の仕事として受け入れることにした。


(これで信仰心が戻るのならば、ノア様への恩返しにもなるわ)


 国王が語り終えると、筆頭公爵家の当主でありオリヴェルの父でもあるマキラ公爵が、前へと進み出てきた。


「精霊神様と並び立たれる存在となられたライラ様に、貴族を代表して成人のお祝いを申し上げます」


 マキラ公爵が恭しく礼をすると、貴族達もそれにならう。ライラはその姿を見て違和感を覚えた。

 ライラは公爵令嬢だけれど、地位でいえば当然爵位を持っているマキラ公爵のほうが上。

 職業としてもライラは離宮に仕える聖職者達と同じ扱いになる予定なのに、この対応はどう考えてもおかしい。

 これはどういうことなのだろうと国王に視線を向けてみると、国王もライラとノアに向けて礼をしているではないか。

 ライラは焦ってノアを見上げた。


「ノア様……、わたくしはただの従者ですのに、皆様が勘違いをしていないか心配ですわ……」

「勘違いなどしていない。ライラは俺と同等の存在となったのだから、当たり前の対応だろう」

「えっ……」


(同等って……、そういう意味なの!?)


 ノアは種を渡した際に、「精霊になるわけではない」と説明してくれたが、あれは単に身体の構造的な話だったようだ。


 身体の構造的に完全な精霊にはなれないけれど、精霊と同じ扱いになる。だから聖域へ入れるようになった。

 そしてライラはノアの種を飲んだので、精霊神と同じ扱いになり、神殿へも入れるように。ノアしか入れない神殿へ入れたことについて、もっと深く考えるべきだった。

 ノアはライラの面倒を見てくれるような言葉ばかりかけていたので、そちらに意識が向いていたライラ。けれど、あの種の効果は『神と等しい存在』となるものだったのだと理解した。


 今になって思えばノアもオリヴェルも国王さえも、ライラが従者になる件については微妙な反応をみせていた。

「ノア様の従者になる」とライラが張り切っていたので、皆で合わせてくれていただけだったのだと思うと、顔から火が吹き出そうなほど恥ずかしい。 


 ライラは今になって、自分がとんでもない存在になってしまったのだと自覚したのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

gf76jcqof7u814ab9i3wsa06n_8ux_tv_166_st7a.jpg

◆作者ページ◆

~短編~

契約婚が終了するので、報酬をください旦那様(にっこり)

溺愛?何それ美味しいの?と婚約者に聞いたところ、食べに連れて行ってもらえることになりました

~長編~

【完結済】「運命の番」探し中の狼皇帝がなぜか、男装中の私をそばに置きたがります(約8万文字)

【完結済】悪役人生から逃れたいのに、ヒーローからの愛に阻まれています(約11万文字)

【完結済】脇役聖女の元に、推しの子供(卵)が降ってきました!? ~追放されましたが、推しにストーカーされているようです~(約10万文字)

【完結済】訳あって年下幼馴染くんと偽装婚約しましたが、リアルすぎて偽装に見えません!(約8万文字)

【完結済】火あぶり回避したい魔女ヒロインですが、事情を知った当て馬役の義兄が本気になったようで(約28万文字)

【完結済】私を断罪予定の王太子が離婚に応じてくれないので、悪女役らしく追い込もうとしたのに、夫の反応がおかしい(約13万文字)

【完結済】婚約破棄されて精霊神に連れ去られましたが、元婚約者が諦めません(約22万文字)

【完結済】推しの妻に転生してしまったのですがお飾りの妻だったので、オタ活を継続したいと思います(13万文字)

【完結済】魔法学園のぼっち令嬢は、主人公王子に攻略されています?(約9万文字)

【完結済】身分差のせいで大好きな王子様とは結婚できそうにないので、せめて夢の中で彼と結ばれたいです(約8万文字)


+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ