表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/102

26 ノアと信者の祈り2

 ライラとノアが離宮へと移動すると、真っ先に聖堂内をうろうろしているオリヴェルが目に入った。

 彼は二人が移動してきたのを目に留めると、安堵したように駆け寄ってくる。


「心配したよライラちゃん!一週間も神殿に籠りっきりで大丈夫だった?あちらにはまだ何もないだろう?」

「ご心配をおかけしてしまい、申し訳ありませんオリヴェル様。ノア様のおかげで大丈夫でしたわ。それよりも、ノア様への信仰心については進展などありまして?」


 一週間も眠り続けていたとは言いにくいイライラは、さっさと本題を尋ねる。

 するとオリヴェルは、曖昧な表情でサロンへと案内してくれた。


「実は状況がさらに悪化していてね。公爵夫人が逮捕されたことが、すでに王都中に知れ渡っているようなんだ。」

「そうでしたの……」

「いずれは公表されることではあるけど、時期が悪かったね。だから、こちらもそれを払拭できるだけの手を打たなければならなくなったんだ」

「払拭できるだけ……とは?」


 従者になったことを公表するだけでは足りないとなると、他にどのような策があるのだろう?ライラが首を傾げると、オリヴェルはにこりと微笑む。


「ライラちゃんの成人の儀を、国主催でおこなっても良いかな?」

「そんな……!それでは、王家と同じ扱いになってしまいますわ!」


 貴族はそもそも成人の義などおこなわない。成人の誕生日をいつもより盛大に祝うくらいだ。

 いくら注目を集めたいからといって、王家と並ぶような行為は逆に反感を受けるのではとライラは心配になったが――。


「ライラちゃん、君のその容姿にはそれだけの意味があるんだよ。人間ではありえないその美しい髪の毛を見れば、誰もが納得するはずなんだ。精霊と等しい存在になったとね」


 ライラは改めて自分の髪の毛を見下ろした。オリヴェルの言う通り、これほど透き通るように輝く髪の毛など人間ではあり得ない。

 自分自身のことなのであまり客観的に見ることができなかったライラだけれど、改めてノアが説明していた『同等の存在』という言葉が浮かんでくる。

 オリヴェル達から見ても、自分はもう人の枠から外れているのだとライラは感じた。


「わかりましたわ。成人の義をおこなうことでノア様への信仰心が戻るのでしたら、従者としての務めを果たさせていただきますわ!」

「さすがライラちゃん!こういう時は公爵令嬢らしい決断力の良さだね」

「お褒めいただき光栄ですが、わたくしが了承する前に準備は始まってるのではありませんこと?」

「バレたか。ライラちゃんなら引き受けてくれると思ってね!でも今日からは大体的に公表するよ!」


 オリヴェルの宣言通り、その翌日から水面下で行われていた準備は、国主導の行事として王都中に知れ渡ることとなった。

 唯一精霊神の神殿へ入ることを許され、精霊神と同じ容姿を手に入れたライラのことを、人々は神話の復活だと喜んだ。





 そして準備に一ヶ月が過ぎ、ライラの成人の儀当日がやってきた。

 本日のライラの衣装は、この日のために半ば強制的に仕立てられてしまった真っ白なドレス。

 生地も装飾も最高級品のものが使用され、とにかく豪華でキラキラしている。

 アルメーラ家の評判が落ちてる時期に、このようなドレスは反感を買うのではとライラは心配になったが、ノアの輝きに見劣りしない服装が必要だとオリヴェルに説得されて諦めた。

 唯一、ノアが贈ってくれた成人祝いのネックレスだけが、シンプルで落ち着く。


「ライラちゃん、めちゃくちゃ可愛いよ!今すぐ俺のお嫁さんにならない?」

「おい……オリヴェル。今日を貴様の命日にてやろうか」

「おや?ただの主と従者の関係であるノア様に、そんな権限があるのですか?」

「俺の従者にしたからには、俺がライラの幸せを保証しなければならない……」


 ライラの姿を見るなり、なぜか言い争いを始めた二人。この二人はしょっちゅうライラの前で言い争いをしているけれど、離宮に仕える聖職者の中で『ノア様』と呼ぶことを許されているのはオリヴェルだけのよう。

 ノアにとっては友達のような存在なのだろうとライラは思っている。


「ふふ、ノア様ったらそこまでしていただかなくても、わたくしの幸せは自分で切り開きますわ」

「そうか……、ライラはいつもながら頼もしいな……」


 今日はノアも、ライラとお揃いの生地と装飾が施された衣装を身にまとっている。

 これでライラの頭にベールをつけたら、新郎新婦のようだとライラは思った。

 けれど神が結婚するとしたら、相手は女神だろう。ライラでは不釣り合いだと思いながら小さく笑うと、それに気がついたオリヴェルが首を傾げる。


「どうしたの?ライラちゃん」

「ノア様がご結婚するとしたら、お相手はどのような女神様かと思いましたの」

「ライラ連続攻撃は止めてくれ……、心へのダメージが大きい……」

(連続攻撃?)


 ノアは何を言っているのだろうと疑問に思っていると、儀式の準備が整ったと知らせがきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

gf76jcqof7u814ab9i3wsa06n_8ux_tv_166_st7a.jpg

◆作者ページ◆

~短編~

契約婚が終了するので、報酬をください旦那様(にっこり)

溺愛?何それ美味しいの?と婚約者に聞いたところ、食べに連れて行ってもらえることになりました

~長編~

【完結済】「運命の番」探し中の狼皇帝がなぜか、男装中の私をそばに置きたがります(約8万文字)

【完結済】悪役人生から逃れたいのに、ヒーローからの愛に阻まれています(約11万文字)

【完結済】脇役聖女の元に、推しの子供(卵)が降ってきました!? ~追放されましたが、推しにストーカーされているようです~(約10万文字)

【完結済】訳あって年下幼馴染くんと偽装婚約しましたが、リアルすぎて偽装に見えません!(約8万文字)

【完結済】火あぶり回避したい魔女ヒロインですが、事情を知った当て馬役の義兄が本気になったようで(約28万文字)

【完結済】私を断罪予定の王太子が離婚に応じてくれないので、悪女役らしく追い込もうとしたのに、夫の反応がおかしい(約13万文字)

【完結済】婚約破棄されて精霊神に連れ去られましたが、元婚約者が諦めません(約22万文字)

【完結済】推しの妻に転生してしまったのですがお飾りの妻だったので、オタ活を継続したいと思います(13万文字)

【完結済】魔法学園のぼっち令嬢は、主人公王子に攻略されています?(約9万文字)

【完結済】身分差のせいで大好きな王子様とは結婚できそうにないので、せめて夢の中で彼と結ばれたいです(約8万文字)


+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ