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23 ノアと買い物4

 アイスを食べ終えてから、アウリスは叔母についての報告をしてくれた。

 叔父とオルガは、叔母の件については何も知らなかったようだ。けれどオルガの情報によると、叔母が頻繁に隣国の商人を公爵邸に招き入れては、アクセサリーなどを買い取っていたらしい。


「そういわれてみれば、叔母様は見慣れないデザインのアクセサリーをよく身に付けていらっしゃいましたわ」

「取引に紛れて毒を入手していたのかもしれないので、今はそちらも捜査させているところだよ」


 叔母の部屋の捜索では、上げ底になっている宝石箱が見つかり、そこに毒の粉が入っている紙包みが隠されていたそうだ。


「俺も確認してみたけれど、ライラの証言通りに独特な甘い香りがしたよ」

「そんな……!アウリス様、お身体は大丈夫ですか!」


 あの香りで眩暈に襲われたのを思い出しながら、ライラは青ざめた。

 アウリスはアルメーラ公爵家に婿養子に入ったが、王子としての地位は残っている。彼に何かあれば国の一大事だ。


「俺を心配してくれるの?一瞬だけだったから、大丈夫だよ。ライラは優しいね」


 アウリスが嬉しそうにライラの頭をなでようとしたが、どこからともなく伸びてきた植物のツタによって、アウリスの手は弾かれる。

「ライラに触れるな」というノアの声に、アウリスは曖昧に微笑んだ。


 話を元に戻したアウリスによると、残念なら叔母はまだ見つかっておらず、王都での目撃情報があったので今は騎士団が全力を挙げて、捜索をしている最中だそうだ。

 ライラも先ほどから、広場を通り過ぎる騎士達を何度も目にしている。


「この辺りに潜んでいるのかしら。先ほどよりも騎士が増えてきたように思いますわ」

「そうかもしれないね、危険が及ぶかもしれないから、ライラはもう帰ったほうが良いよ。馬車まで送るね」


 アウリスは立ち上がる動作に紛れるようにして、ライラの頬に触れた。


「イチゴの果肉が付いてる」

「え?」


 果肉がついたまま話していたなんて、恥ずかしい。

 アウリスに口元を指ですくわれ、ライラが顔を赤くしていると――。


「ライラに触れるなと言っただろう……」


 怒っているようなノアの声と共に、空が急に黒い雲に覆われる。

 眩しい光と共に、心臓にまで響くような爆音の雷鳴が轟き、ライラは「きゃー!」と悲鳴を上げながらノアに抱きついた。


 すると一転、黒い雲は消え去り、先ほどまでの晴天に戻ってしまった。


「今のはなんだったのかしら……」

「天候が不安定なようだね。昨日の豪雨を思い出すよ」


 アウリスの指摘で、ライラも昨日の豪雨を思い出す。

 あの時は確か、ノアとオリヴェルが言い争いをしていたような気がする。理由はなんだったかとライラが思い出そうとしていると、再びアウリスが口を開いた。


「煙が上がっている……!今の雷で火事が起きたのかもしれない。様子を見てくるよ」


 すぐに煙の方角へと走っていくアウリスの背中を見送ってから、ライラもすぐに立ち上がる。


「わたくし達も参りましょう!何かお手伝いできるかもしれませんわ!」


 ノアの手を引いて走り出そうとしたライラだったが――。


「きゃ!ノア様!?」


 なぜかノアに抱き上げられてしまう。


「ライラの速度に合わせていたら日が暮れてしまう。行くぞ」

「なっ……!それはひどすぎますわノア様!」


 しかし言うだけのことはあり、ライラとは比べものにならない速さでノアは走っていく。

 あっという間にアウリスに追いつき、三人で現地へと向かった。


 雷が落ちたと思われる辺りには、すでに騎士や近隣に住む人達が駆けつけており、雷に打たれたと思われる木に水をかけている最中だった。

 三人に気がついた騎士の一人が、慌ててアウリスの元へと駆け寄ってきた。


「アウリス殿下!なぜこちらへ?」

「たまたま近くにいてね。状況は?」

「幸いにも燃えたのはこの木だけでしたので、すでに火は消し止めました。ただ横にある倉庫の壁が、落雷の衝撃で一部崩れてしまいました。中に人がいるようなのですが、危険な状態なので中へ入れそうにありません」


 古そうな倉庫は彼の言う通り壁の一部が崩れており、今もぽろぽろとレンガが落ちてきている状態。

 あれが頭上にでも落ちてきたら危険だし、倉庫自体が崩れる心配もある。


「倉庫が倒壊する前に、何とか助け出さなければ。騎士に重鎧を着せて入らせようか」

「良い考えですが、重鎧の準備をしている間に倉庫が倒壊してしまわないか心配です。近くの防具屋で鉄兜でも調達して、私が入りましょうか」

「ありがたいけれど、それだと君を危険に晒してしまう」


 アウリスと騎士が相談をしていると、ノアがライラを降ろしてからアウリスに声をかけた。


「俺がやろう。力を一般人には見せられないから、人払いをしろ」

「よろしいのですか?」


 精霊神は人に干渉しないので、アウリスとライラは驚く。けれど今は神に頼るのが得策だと考えたアウリスは、すぐに騎士達に住人達の人払いをさせた。

 辺りが静かになると、ノアは植物のツタをうようよと出現させて、それらを倉庫内へと侵入させる。

 ツタによって外へ運ばれたのは、貴族の身なりをした女性だった。

 彼女が仰向けに地面へと降ろされるのを見ていたライラは、どきりとしてノアの服を掴んだ。


(叔母様……!)

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