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18 アウリスが向かった先1

◆アウリス視点です

 近衛騎士を集めたアウリスは、自分とオルガの結婚披露パーティー会場となっている王宮の大広間へと急いだ。

 精霊神の話ではライラを助ける際に、彼女の叔母と接触しているようだ。

 離宮に精霊神とライラがいることは叔母の耳にも入っているはず。一刻も早く、叔母を捕縛せねばとアウリスは焦っていた。


 近衛騎士達によって勢いよく大広間の扉が開かれ、なだれ込むように中へと入ったアウリス達。


「アルメーラ公爵夫人を捕らえよ!」


 叫びながら大広間を見渡したが、叔母の姿は見当たらない。

 アウリスはオルガの元へと駆け寄った。


「オルガ!君の母親はどこにいる!?」

「アウリス様!わたくしを置き去りにして、今までどこにいらっしゃいましたの!?まさか、ライラに会いに行っていたんじゃ!ひどいですわ!アウリス様はもうわたくしの旦那様ですのよ!」


 自分以上の剣幕で掴みかかってきたオルガを見て、アウリスは少し冷静さを取り戻した。

 ライラのことで周りが見えなくなってしまい、彼女の言う通り夫としてひどい対応をしてしていたようだ。


「すまなかった……、オルガ。それについては後でゆっくりと謝罪させてくれ。けれど今は一刻を争うんだ、母親の居場所を教えてくれないかな?これは王命だ」

「王命……?お母様なら、領地との移動で疲れたからとお休みになられているけれど。お母様がどうしたというのよ……」


「それも後で話すよ」とオルガに微笑みかけたアウリスは、踵を返して近衛隊長の元へと歩き出した。


「夫人は控え室で休んでいるそうだが、すでに王宮を出た可能性も高い!必ず見つけ出して捕らえよ!」

「承知いたしました!家族はいかがなさいますか?」

「関与している可能性もあるから、俺が事情を聞くよ」


 近衛騎士数名を残し、残りが捜索へ出ていくのを確認してから、アウリスは大広間を見渡した。


 庭では雨でずぶ濡れとなってしまったこともあり、大半の参加者は帰ってしまったようだ。

 残っている者は着替えを持ち合わせていたか、着替えて戻ってきたか。

 いずれにせよ、もう披露パーティーという雰囲気ではなかった。


 それに加えて、新郎であるアウリスやその父親である国王まで欠席していたのだから、まともな貴族なら帰って当然。

 むしろこれだけ失態を繰り返しても尚、自分に付きたいと思っている貴族がいることが、アウリスには滑稽に思えてならなかった。


 しかし、これからアルメーラ公爵家はさらに信用を失う。


 ライラの叔母からの事情はこれから聞くことになるが、目撃者が精霊神なのだから罪が覆る可能性はまずない。

 ここにいる貴族達にはせめて、自分を見捨てずにいてくれたお礼として身の振り方を考える余裕を与えてやりたい。


「実に残念な話だが、我がアルメーラ公爵家から犯罪者が出てしまった。これからその対応をしなければならないので、本日の披露パーティーと舞踏会は中止とする。皆、これまで私に付いてくれて感謝する」


 その場がどよめきが起きる中、一人の貴族が遠慮がちに声を上げる。


「アウリス殿下……、犯罪者とは先ほど探しておられた公爵夫人でしょうか……」

「そうだ、夫人にはライラ・アルメーラに対する殺人容疑がかけられている」

「そんな!嘘よ!お母様がそんなことするはずがないわ!ライラがアウリス様を取られた腹いせに嘘をついているんだわ!」


 オルガが怒りを露わにしながらアウリスの元へと詰め寄ってくる。

 ライラを侮辱され怒りを覚えたアウリスは、普段は人前で見せることのない冷めた視線を向けた。


「ライラが嘘をついていると?半年もライラが苦しんでいるのを見てきたというのに、よくもそんな発想が浮かぶね。それとも君は一緒に住んでいたというのに、ろくにライラの見舞いもしていなかったのかな?」

「それは……」


 嫌味のつもりで言ってみたが、どうやらオルガは本当にライラを気遣うような暮らしはしていなかったようだ。

 ライラのことで頭がいっぱいでそれすら見抜けなかったことが悔しくて、アウリスは拳を握りしめた。


 たじろぐオルガの後ろでは「あいつは、なんてことをしてくれたんだ!」と、彼女の父が床に崩れ落ちている。


 ライラと精霊神が離宮にいることを知っても逃げる素振りもないこの二人は、事件には直接関与していないのかもしれない。

 アウリスはそう思いながら、近衛騎士に二人を別邸まで送るよう指示を出した。


 貴族達の質問にいくつか答えたアウリスが大広間を出ると、廊下には親友であるオリヴェルの姿が――。

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