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第七話

「少佐、アレを」


ドグレイが森の方を指差す。

やはり、この森はよく分からない。

さっきまでは濃霧の中だったのに気付けば森の目の前だ。

しかも、可視光線以外の電磁波を攪乱すると来た。

それの所為でサーモグラフィもx線も使えない。

勿論、電波なんて以ての外。

とはいえ、有線で中継器を繋げば繋がるが。


「主たちを集落に案内する。付いて来て下さい」


森から来た先程の男がそう言いその後ろに控えている数人が森に先に入る。


「少佐殿、なぜ此処に人が居るんでしょう?」

「それは知らんよ。後で聞こうか?」

「お願いします」


リアイスが小声でそう答える。

僕は周囲を気遣いつつ男たちに付いて行く。

その瞬間、横から鱗に覆われた例の狼――仮称として鱗狼と呼ぶ――が飛び出してくる。

男たちは槍を、僕らは銃を鱗狼に向かって撃つ。

しかし、鱗狼の鱗に弾かれてまともに攻撃出来ない。

というか、跳弾した弾が他の所に当たっているので撃つのを止めさせ鱗の一~二mm程の隙間をナイフで刺すことにした。

男たちの槍は鱗と同格の物質で作っているらしく弾かれるどころかサクサクケーキの様に切っている。


「このライフル、一応12.8mm徹甲弾を使ってるはずなんですけど」

「対戦車ライフルでも持って来るべきだったか?」

「そうですねっ」


リーネスが狼を上手く避けつつ鱗の隙間にナイフを刺しながらそう答える。

流石は軍人と言うべきなのか、立ち回りは完璧だ。

リアイスは敢えて四方を囲ませ、飛び掛かってきたところで回避して狼を殺していく。

ドグレイは今では珍しい銃剣を使って狼を捌き切っている。

狼がじゃれつく子犬の様に見えて来た。

僕はと言えば太刀で狼を突いたり斬ったり取り敢えず、誰よりも多く斬り殺していた。

現地民にも引かれるとは思ってなかった。


「リアイス、それの成分構成は?」

「炭素です。結晶構造自体はロンズデーライトと同じ六方晶系ですが硬さはそれよりも上と見られます」

「割れるのか?」

「超々高出力レーザーを一点に照射して半分くらいまでは。ただ、劈開が明瞭なので横向きに照射すれば何とか」

「それ、確か記憶によると最新式超効率型太陽光発電で1時間くらい掛かって充電した軍事用中型蓄電器の容量を全部使うレベルだったと記憶してるんだけど」

「そうですね…」


リアイスが引きながら結果を見ている。


「あっ、勿論コレで充電したものですので大丈夫ですよ」


リアイスが付け足すようにそう言った。

リアイスの手には解析用端末の他に手回し発電機があった。


「幾ら何でも無理があるだろ。アレの充電容量は5kwだぞ?」


そう、最新式超効率型太陽光発電で1時間と言うと約5kwになるのだ。

それを旧式手回し発電機で貯めるともなれば…えー、10回回して5wだから…一万回。


「一万回も回したと?」

「いや、流石に無理だったので1kw分だけ太陽光発電で貯めました」

「よく腕が壊れなかったな」

「ホントですよねー」

「もうちょっと自分の事大事にしろよ」

「ちょっ、いきなり何ですか」

「いや、腕なんか壊したら軍どころか嫁にも貰えなくなるぞ?」

「嫁!?」

「まあ、どうかは知らないがそんなもんじゃないのか?」

「少佐殿には婚約者の方は居るんですか?」

「居るぞ」

「貴族の方ですか?」

「ああ、レィクレ家のご令嬢だ」

「レィクレ家…ですか」

「ああ。参謀総長の娘だよ」

「やっぱりそうでしたか…」


リアイスがそう言うとほぼ同時に地面が揺れ始める。


「地震か?」

「いえ、何かが歩く音のようです」

「少佐、現地民からの情報だ。この揺れは大型生物の足音だと」

「総員、第二種戦闘配置へ移行せよ」

「「「はっ」」」

「グレネードランチャーも使え」

「了解しました」


リーネスが携帯型三式六連対戦車砲を取り出して弾を装填する。

後ろではドグレイが対戦車ライフルのバイポッドを立ててうつ伏せで狙っていた。

そんな様子を見つつ僕は大型生物――熊と狼を足してソレを二足歩行にして鱗を付けた様――に向かい能力を発現していた


「〈智血鎖縛〉」


僕がそう言えば地面から次々と紅い鎖が飛び出し大型生物を縛っていく。

しかし、大型生物はそれを物ともせず走ってくる。

現地民の例の槍を使って付いているものの特に気にしていないように見える。

リーネスの対戦車砲は流石と言うか鱗が割っている。

対戦車ライフルも効果は有る様だが対戦車砲の方が効いている様だ。

とはいえ、数メートルの巨体に突っこんでいく現地民は凄いと思う。

と、そろそろ僕もまともに戦わないと文句を言われてしまう。


「“我、神に祈らん、願わくば、我が宿敵を、うち滅ぼす力を、与えたまえ”〈グングニル(神血紅槍)〉秘奥ヶ一:乱月血華」


――刹那、大型生物の身体が穴まみれになり血が噴き出し血の華を咲かせる。


珍しく(・・・)綺麗に咲いたなー」


僕は血の華を見ながらにそう呟く。

一年ぶりにしてはまともに使えた。

勿論、満足しているは僕だけで他は全員呆然としている。


「少佐?」「少佐殿?」「ルドレアさん?」


と思ったら、女子三人から白い目で見られている。

何もしてないんだが。


「どうした?」

「いや…アレを見て綺麗とか言える神経がちょっと…」


リーネスが微妙に口の端を吊り上げてそう言う。

僕は苦笑しつつ咄嗟にリーネスを抱き抱えてその場を離れていた。

――刹那、僕が居たその場所は一瞬にして無くなった。

否、無くなったのでは無いへこんだのだ。20メートルほど。

現地民も避けれた様だ。

僕は再度、バックステップで目に見えない“何か”を避ける。

その度に地面は5メートルほど凹み、ガラス状に変質する。

リーネスを抱き抱えている所為で無理な行動はできない。

僕も避けきれるわけも無く、服がところどころ破けている。

ドグレイは〈神眼〉で観察している様だが、一向に捉えられていない。

銃は構えているが撃ったところで当たるわけ…。

そこで僕はドグレイに無線で作戦を伝える。


「じゃあ、頼むぞ」

『はい』


さり気なく無線を使っていたが此処では妨害電波が意味を成さないらしい。

こんな事なら先に使っておくべきだったかもしれない。

それはともかくだ。

僕は敢えて例の何かの攻撃に当たっている。

勿論、ある程度の回避はするが銃で狙える程度には相手の動きを制限する。

そうすれば、銃に直結された射撃補助システムによって回避機動を予測して当てる事が出来るはずだ。

尤も、システムの演算速度が追いつけばの話だが。

リーネスが先程から何か叫んでいるが、そんなのを気にしている余裕はない。

相手の動きが多少読めても人間の可動範囲の問題があるのだ。

捌き切れる訳が無い。


『3、2、1…弾着今!』


無線から大声が聞こえる。

どうやら、迫撃砲なんて物を出してきたらしい。

まあ、所詮は軽迫撃砲だ。

グレネードランチャーの方が破壊力はあるはずだ。

とはいえ、かなり離れていてしかも高速で移動し続けているのだ、当たる訳が無い。

と思ったら、後から来た時限信管の弾が上空で爆発する。

威力を見たところ弾薬にC4でもくっ付けていたらしい。

それのお陰で爆発した外郭が雨のように降ってきている。

化物の相手で精一杯なのにあいつらは僕を殺す気なのか?

などと疑問に思ったが化物にも多少の効果は有ったので今回の事は不問にしよう。


『少佐、現地民の方が加勢して下さるそうです』


ドグレイから無線で援軍が来たと報告されるが返信してる余裕はない。

正直言って、脚が(もつ)れそうだ。

ついでに言えば体力もかなり限界に近い。

かなり立体的な動きをしているので体力もドンドン消耗する。

本当はグングニル(神血紅槍)を使って交戦したいモノだが右手にリーネスを抱えている以上、本気で攻撃は出来ない。

ピストルなんか豆鉄砲も良いところだ。

せめて、迫撃砲並の威力が要る。

さっきからリーネスが能力を使って攻撃しているものの跳弾した弾がこっちに来ているので止めて貰った。

コレに勝てる自信が無い。

僕がふとそう思った瞬間、僕は気を失った。


☆ミリア視点☆


「はぁ!?先輩が居ないだぁ!?」


援軍に来た仮拠点内で援軍に来た私は声を荒げていた。


「中尉、抑えて下さい」


私は報告した黒装束の男――影正に殴りかかろうとしていた。

勿論、私の部下が止めた。

援軍にはチヌークが動員され一個師団が派遣されていた。

普通に考えて何も無い極寒の北国に誰が好き好んで来るだろうか。


「で、先輩は何処に行ったの?」


私はあからさまに不機嫌に影正にそう聞く。


「近くの洞窟としか」


影正が答えるや否や私はそいつに飛び掛かる。

再度、部下が抑える。

こんな攻防が三十分程繰り広げられた。

なぜ、三十分で終わったのか。

それは参謀総長フォレル=フォン=レィクレとその娘ミサ=フォン=レィクレが来たからである。

それからの会議によって救出部隊が編成されることが決定した。

洞窟周辺が高濃度の放射能汚染があるのは分かっていたので除染部隊も編成された。

救出部隊の隊長はミサ=フォン=レィクレ、除染部隊の隊長はレグレドール家の長男に決定した。

ミサは軍人ではないが娘に甘々の参謀総長によって決められた。

それで良いのか、参謀総長。

私達の隊は待機を命じられていた。


「にしても、参謀総長閣下が直接来るなんて…」


私は仮拠点を出るなりそう呟く。

VIP用のヘリが飛んできたらと思えば参謀総長が出てくるのだ。

衝撃の一言では言い表せない。

しかも、年端もいかない自身の娘を連れてなんて有り得る話ではない…はずだった。

軍人でも無ければ成人すらしていない。

しかも、超高速便でケレスから帰って来たばかりと来た。


「中尉殿、どうか?」


私が外で唸っていると部下のバーゲスト少尉に声を掛けられた。


「何でもない。なんで参謀総長閣下が来たのか不思議なだけ」

「そうですか。にしても、なぜ大将閣下が?」

「なんでも先輩の婚約者からの依頼らしいわよ」

「少佐殿の?」

「ええ、あの参謀総長閣下の横に居たプラチナブランドのロングの子」

「ああ。レィクレ公爵令嬢でしたか」

「ええ。結婚は成人してかららしいけど。娘に甘過ぎよ」

「中尉殿も娘さんが出来ればそうなるんでしょうか?」

「ばっ」


私は「馬鹿じゃないの」と言うのを堪えて咳払いをして話を逸らす。


「にしても、なんで私達が待機なのか…」

「小官には分かりません」

「まあ、仕方ないけど。にしても、敵国の妨害電波を止めるための部隊を送り込んだって…本気よね」

「まさか、敵の発電所から地中に伸びている高圧ケーブルを攻撃衛星で攻撃するとは…」

「攻撃衛星って言っても1メートルくらいでしょ?」

「そうですが、直径一メートルの隕石が秒速0.442㎞で墜ちて来るんですよ?」

「よくわからない」

「まあ、そうでしょうね」


バーゲスト少尉はそう言って拠点内に入っていった。

私も寒くなって来たので拠点に戻った。

作者は計算がかなり苦手なので計算などが合ってるか分かりません。

最後の辺りの衛生の件が間違っていたらすみません。

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