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第五話

「少佐殿、近くの洞窟を一時拠点にしましょう」


リーネス中尉がそう言うと僕とドグレイ少佐が振り向く。


「あっ、失礼しました。ルドレア少佐、近くの洞窟を一時的な拠点としませんか?」

「貨物室の連中は?」

「既に移動の用意を」

「あの木箱を移動するのか?」

「はい。移動用の車輪のお陰で楽に移動できているので30分以内には撤退できるかと」

「そうか」

「では、小官は洞窟を偵察してきます」

「頼んだ」


僕は洞窟の方に走っていくリーネス中尉の後ろ姿を見ながら溜息を吐く。


「ヴィドレ少佐、大丈夫?」

「ああ、それより例の学生は?」

「彼女は今、グアヴィレーム中尉と一緒に洞窟探検中」

「そうか」

「それで、なぜ貴官はアレを察知できた?」

「察知系の能力ですよ」

「なるほど、魂の波動を感じる能力?」

「そうですね。〈精霊の息吹〉という能力です」

「機密情報なのでは?」

「殺傷能力は皆無だからな」

「そう言う事ですか。それよりも何故、音速機にあんなのが?」

「分からない。まずそもそも、音速機の壁を破れる様な奴がいること自体驚きだな」

「?」

「アレの壁はマグネシウム合金でかなりガチガチに固められているからそう簡単に破れないはずなんだけど」

「要は?」

「アレはカリュブディス級の化物だって事だな」

「…これは緊急の案件として参謀本部に報告しましょう」

「まずは安全の確保が最優先だろ?」

「と言っても、防衛陣地を築くには人手が」

「後続のもう一機に精鋭部隊が乗ってるはずだから」

「了解したわ。取り敢えず、彼らを手伝いましょう」

「ああ」


そう言って僕らは洞窟へと荷物を運んだ。

洞窟はそこまで広くは無いものの貨物室の連中と僕らが十分に暮らせる程度には開けていた。

とはいえ、衛生環境は非常に悪く怪我を負うと死ぬ者も度々居た。

幸い、後続の部隊三名とは落ち合えたが残りの一名は行方不明だそうだ。


「さて、どうしたものか…」

「無線は?」

「無理でしょう?」

「ああ、此処には妨害電波が出ているはずだ」


戦闘要員は洞窟内に設けた戦闘要員の為の机で頭を抱える。

それもそのはず、この地域にはカリュブディス級の化物が跳梁跋扈するだけでは飽き足らず資源はかなり少なく、その上援軍を送ってもらおうにも場所が場所なだけに送ってこられるのに非常に時間が掛かり、まずそもそも無線が使えないので援軍要請すら本部に届かない。

しかも、自分達の安全確認や安否確認も出来ない。

ましてや、

この場に居る七名はその事を再度認識して頭を悩ませる。

そんな中、一人の女性が手を挙げた。


「リアイス学生、なにか?」

「一つ疑問なのですが観測本部へ向かうというのは?」

「行ってどうする?」

「援軍要請をするなど手段は有るかと」

「ソレが出来てたらもう行ってる」

「では、なぜ行かないのでしょうか?」

「簡単だ。この様な雪原で迷った場合、無作為に人員を消費することとなる。それだけだ」

「なるほど、理解いたしました」

「さて、レルト大尉。現状でレーションは何日食いつなげる?」

「はっ。整備兵を含めますと26日分、含めない場合であれば45日程かと」

「ヴィドレ少佐、どうしますか?」

「グアヴィレーム中尉、貴官の意見は?」

「観測任務に就くべきかと」

「面白い提案だ。続けてくれ」

「はい。まず、整備兵に銃を分け与えます」

「銃の絶対数は少ないぞ?」

「肯定しますが、墜ちた飛行機は?」

「なるほど、アリではあるが…無理がある」

「といいますと?」

「どうやって、あの飛行機に近づく気だ?」

「…確かに」

「仮に銃が無くても戦えるものの銃を貸し与えたとして弾は?」

「……」


彼女は俯き椅子に座る。

やがて、全員が口を噤む。


「まっ、もう寝ようか。後の事はドグレイ少佐と相談する」

「はっ」

「では、ドグレイ少佐以外は明日に備え休め」

「「「「「はっ」」」」」


そうして会議室(仮)から人が出て行く。


「それで何で、私を残したわけ?」

「だから言っただろう?」

「他の用事があるんじゃ?」

「正解」

「何かあったんですか?」

「第二学園要塞都市防衛基地と繋がった」

「ッ!!何故それを言わなかった!」

「落ち着いて。色々と訳が有ってね」

「訳?」

「ああ。連絡は出来た。応援は無理だろうが」

「?」

「さっき、衛星から位置情報を教えて貰った」

「それで何処だったんですか?」

「エドゲ島のある森林だった」

「つまり?」

「観測予定地に最も近い場所だな」

「…どうやって連絡を繋いだ?」

「コレだよ。観測用の簡易端末」

「貸せ」

「駄目だな。貸せない」

「良いから貸せ」

「無理だ。これ以上やるなら正式な手続きを行うことを推奨する」

「こうなれば序列6位として権限を」

「では、こちらは序列2位の権限を行使させてもらう」

「序列2位!?何時の間に?」

「間の時間に軽く、ね」

「軽くやってあの都市の序列2位になど、なれない」

「では、一時的には5Sの閲覧権限を付与する」


僕がそう言うと彼女の端末に僕の個人情報が表示される。


「ッ!?」

「コレで理解できたと良いけど。5Sの閲覧権限を剥奪します」

「なんで、序列1位にならなかったか聞いても?」

「あそこの主座になんてなった日には此処に来れなくなってたから」

「そんな理由だけで…」

「それより、僕は出かけて来る」

「何かしに?」

「無事に戻ってこなかったら…よろしく」


僕はそう言って洞窟を出る。

防寒スーツの温度計の表示を見るとマイナス三十度と表示されている。

このスーツが無ければ軽く死ねる温度だ。

僕は放射線濃度計測器を起動する。


「うわっ。これは…このスーツで防げるギリギリかよ…」


スーツのモニターに表示されているのは1Svだった。

僕はスーツの各部を念の為に確認する。


「各部に危険箇所無し。オールグリーン、と」


僕は防核仕様の太刀を取り出して警戒しつつ周囲を探索する。

と、その時後ろから声が掛けられる。


「少佐殿、失礼します」

「何者か?」


僕は太刀を抜き相手の喉元に太刀を突き付ける。


「リアイスか…。脅かしやがって」

「すいませんでした」

「で、なんで此処に?」

「ドグレイ少佐殿から追ってくれと」

「そうか」

「それで、何をしていたのでしょうか?」

「此処の放射線濃度だ」


僕はそう言ってリアイスにデータを送信する。


「コレって…。まさか、気付いて?」

「いや、さっき確認したばかりだが…。この特殊防寒服は人数分しか無いからな」

「というか、なんでこんな放射線濃度が高くなってるんでしょうか?」

「それの原因探しだな」

「分かりました。一緒に探しましょう」

「では、コレを」


僕は35式特殊弾頭専用6式小銃を渡す。


「お借りします」

「では、行こうか」

「はっ」


僕らはそう言って探索を始める。

それから数分、僕らはある場所に居た。


「これって」

「1.5Sv.…か」

「先程から少しづつ上がっているかと思っていたら…」

「まあ、間違いなく此処が原因だろうな」

「コレの限界ってどのくらいですか?」

「3Sv」

「下に?」

「行ってみるかぁ…」


僕はそう言って足を踏み出す。


「暗いですね…」

「暗視アリでこれか…。いつ使うのかと思っていたら意外と使い道があるな、このライト」

「ですね。今時、ライトなんて邪魔でしかないですからね」

「昔は松明だったそうだが…」

「流石に今は使いませんよね…」

「時と場合によっては使うだろうな」

「どんな時ですか…」

「それより、気は抜くな。なにせ、既に1.8グレイだ。現在地も無線もない以上迷えば死ぬと思っておけ」

「はいっ」


その瞬間、暗かった洞窟に霧が掛かり始める。


「…方向を狂わせて来るとは。余程、この奥には行かせてたく無いらしい」

「私も精霊を呼び出して聞いてみます」

「いや、その必要は無さそうだ」


僕は目の前に広がる森を見ながらリアイスに告げる。


「これは森ですかね?」

「放射線で汚染された地下大森林だな」

「少佐殿、此処は放射線濃度が100mSvしかありませんよ?」

「ふむ…」


僕は近くの草を太刀で切って物質鑑定用のケースの中に入れる。


「コレは世紀の大発見かもしれん」

「?」

「この草には放射線を吸収する能力が有るらしい。データは送っておく」


僕はそう言ってリアイスの網膜投射型のデバイスにデータを送信する。


「…中性子線とベータ線を特に分解していますね」

「ああ。ただ、それよりも特筆すべき点と言えば」

「モース硬度10。ダイヤモンド並の硬度を持っている点ですね」

「ああ。この太刀じゃないと傷の一つも入れられない」

「しかも、これの回復能力は異常です」

「10秒で正常な状態に戻すレベルの細胞分裂は最早、異常だ」

「10秒…厳密には10.00045秒」

「それを分析するこの携帯用端末も異常だと思うがな」

「まあ、例の教導隊が作ってますから」

「?」

「ああ、そう言えば少佐殿は第六要塞都市から来たのでしたね。此方の第二学園要塞都市防衛基地付属の教導隊は案外有能でして」

「なるほど、教導隊も穀潰しばかりではない訳か」

「偏見ですね…」

「かもな」


僕は苦笑交じりにそう言いふと顔を上げる。


「リアイス学生、此処の温度と湿度…それと土質、大気成分を調べてくれ」

「はっ」


リアイスは僕にそう言って何処から出したのか、様々な器具を使って計測をしている。


「少佐殿、結果が出ました。土質は植物が育つにはかなり難しいかと。五個、豆を植えて一個発芽すれば良い方かと」

「この植物は進化したとみて問題なさそうだな」

「それと此処の大気成分ですがアセトアルデヒド5.5%、二酸化炭素0.05%、アルゴン0.91%、酸素19.5%、窒素70.2%、未知の物質2.8%です」

「未知の物質?」

「はい。現状で調べることが出来るのはコレが限度かと」

「流石、王国一の研究者の孫娘」

「知ってたんですか?」

「まあな。これでも現場指揮官をやってるんで。それと、君の祖父上には世話になったものでな」

「会ったことが?」

「優秀な研究者だった」


リアイスは淡々と作業をこなして頼んでいないはずの地質調査まで始めている。


「少佐殿…いえ、ヴィドレさん。祖父はどんな人でした?」


リアイスが意を決したように手を止めて僕にそう聞く。


「そうだな。優しい人だった、まあ研究の事となれば少々荒っぽいがな」

「父から聞いた話では祖父は裏切ったと」

「リーヴィアン・グレヴィア=レートスと言う人物が居た。彼は助手だった。しかし、王の勅命を受けある極秘研究をさせられた。その結果、王宮が消し飛んだ。王は奇跡的に会議で王宮には居なかったが他の王族は王の息子以外に残っていなかった」

「それって」

「ああ、妃も王女も全員死んだ。王は悲しみ、結果として彼を死刑に処すことを決めた。しかも、君の祖父上の目の前で、な」

「……」

「君の祖父上は怒り、王の事を携帯型の電磁砲(レールガン)にて射殺した」


僕が粛々と告げ終わるとリアイスが泣いていた。


「少佐殿、ありがとうございました。お陰で祖父が悪人でなかったと分かりました」

「それは良かった。それで、どうなんだ?」

「驚きですね。携帯型のボーリング調査機を持ってきたのですが…」

「?」

「これより地下150mに至るまで全てが石灰岩で出来ています。この土の様な物はまた、水ですが近くに川の様な物が存在する可能性があります」

「つまり?」

「此処がかつて海中だった可能性があります」


Svというのは人が受ける放射線被ばく線量の単位で、日常生活であれば世界平均で年間2.4mSv程とされています。日本平均だと年間2.1mSv程です。(これらのデータはCTスキャンなどを除いた数値です)

ちなみに100mSvというと人に殆ど害は有りません。

1Sv(1000mSv)だと放射線病(軽症 例:吐き気etc.)になります。


次回もよろしくお願いします。

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