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第四話

――閣下の部屋だった。


「クレマティス少将閣下、少佐を連れてきました」

「入れ」

「失礼します」

「さて、ヴィドレ少佐。貴官には現在、民間人殺害の嫌疑が掛けられている。これは本当かね?」

「いえ、民間人はあの戦場には居ないと認識しております」

「ふむ。それではサグレア=フォン=ヴィドレと言う人間に心当たりは?」

「愚弟であります」

「では、この人間とあそこであったのかね?」

「否定します。あそこには超長距離砲撃用〈コア〉と動力炉のみだったと断言します」

「なるほど。これによりルドレア=フォン=ヴィドレ少佐の嫌疑は晴れたものとする」

「閣下、なぜ小官にその様な嫌疑がかかったのかご教授願います」

「先程、本国のある政治家の諜報員が死亡したと通達が来てね。それで付近に居たのが君だったという訳だ」

「なるほど。それと閣下、一時的に休暇を」

「理由を聞いても?」

「閣下の依頼に応える為とだけ」

「分かった。一ヶ月間の休暇を与えよう」

「感謝します。では」


僕はそう言って閣下の部屋を出て部隊の控室に行く。


「少佐殿!」


部屋に行くとグアヴィレーム少尉が飛びついてきた。


「少尉、心配を掛けたな」

「先輩、何でいちゃついてるんですか?少尉も」

「中尉殿には言われたく有りません」

「ミリア、私は一ヶ月間の休暇を与えられた。その期間の指揮は貴官に任せる」

「はっ」

「それとグアヴィレーム少尉は中尉に昇進だ。おめでとう、ついでに一ヶ月の休暇もな」

「少佐殿、偶にはプライベートで出掛けません?」

「まあ、それも良いかもな」

「デートですか?軍務中に浮かれた人達ですね」

「そうだな。では、小隊諸君私はこれにて」

「じゃあ、私も今日は休みます。お疲れ様でした」


グアヴィレーム中尉はペコっと頭を軽く下げ僕と一緒に部屋に戻る。


「なぜ付いてきている…?」

「?だって、買い物一緒にしてくれるんじゃないんですか」

「はぁ。あとで私の部屋に来てくれ」

「何するんですか?」

「情報共有」

「面白くないですね…」

「面白いも減ったくれも無いだろ。それと少将閣下には伝えておいたから安心しろ」

「…任務なんですか?」

「いや、僕が諜報員として預かった仕事だ」

「じゃあ、何で私の事を?」

「いや、新人の中でも一番有能だったから」

「有能ですか?」

「まっ、グアヴィレーム家の長女なだけはあるよね」

「グアヴィレームってそんなに有力貴族って訳でも無いのに良く知ってますよね…」

「ヴィドレ家の取引先だから覚えてるよ?」

「というか、さり気なくタメ口になってますよね?」

「プライベートなんでしょ?だったらタメ口で良いかな、と」

「そう言う事ですか。じゃあ、私も少佐殿の事はルドレアさんと呼んでいいですか?」

「良いぞー。で、どこ行く?」

「じゃあ、第六区のショッピングモールに行きたいです」

「りょーかい。第六区なら第三区経由が近いな」

「第三区ですか?」

「ああ。第三区が隣接してるからな」

「第三区って貴族街でしたっけ?」

「佐官と将官はそこだったな」

「じゃあ、ルドレアさんも?」

「いや、僕は定住じゃないからバトスに家はある。と言っても、ヴィドレ家の分家は此処にあるけど」

「分家ですか?」

「ああ。うちの弟が今は当主やってる」

「弟さんが?」

「尤も最近死んだが」

「ああ…あの人ですか…。悪いことを」

「良いよ。アレは…まあ、クズだったから」

「?」

「色々有るの。それより、今日の夜には此処出るよ。超音速ジェット使っても2時間掛かるからな」


僕はそう言って移動用のバイクに乗る。


「オセアニアから13㎞ってどこですか?」

「スヴァールバル諸島ノールアウストランネ島」

「……耐寒装備を用意しましょう」

「それは超音速ジェットの中で着るから大丈夫」

「というか、何人乗りなんですか?」

「4人乗り」

「少なっ」

「まあ、輸送機って面の方が大きいから仕方ないけど」

「輸送機ですか?」

「ああ。ついでにノールアウストランネ島観測部への土産も持って行く」

「なるほど。そう言えばあっちにはレーションでは無く新鮮な物が配給されていると聞いたのですが?」

「ああ。野菜と魚の料理は出るらしいが」

「世界全種保存館のお陰ですかね?」

「だろうな。今は人工合成のレーションばかりだからな」

「それと合成肉ですよね…。不味いですよね…」

「天然物食べたことあるのか?」

「ええ、派遣留学してた時に一度だけ」

「昔は毎日のように食べれたらしいがな」


僕らは苦笑しつつそう言う。


「ていうか、意外とこのバイク早いですね」

「教導隊が出来る限り早くした結果だな」

「穀潰しの奴らですか」

「穀潰しねぇ…」 

「だってそうじゃないですか」

「あいつら意外と使える装備を開発してるからな」

「例えば?」

「〈マリオネット〉が一番分かり易い例だろうな」

「でもあれ、動かすのに結構コスト掛かりますよね?」

「まあ、製作費だけで数億いくからな…」

「…コスパ悪すぎません?」

「やっぱ穀潰しかもしれない」


『せんぱーい?後輩ちゃんとイチャコラしてます?』


僕はいきなり無線から出た声に驚――きはしなかった。


「ミリア、どうした?」

『いえ、さっきからイチャイチャしてるなー、と』

「なるほど、尾行してたわけか」

『ッ!!何でそう思ったんですか?』

「右後ろに3㎞と50mの塔の上」

『…負けです。でも何で気付いたんですか?視認できる距離ではないと思うのですが…』

「勘と予想と推察」

『勘と予想と推察!?』

「ああ。なんか視線はずっと感じてたし、ミリアが付いてくる確率は99.99%だと予想されてたし、ミリアが羨ましそうに見てたから」

『…物凄く負けた気が…』

「まっ、確率の計算はパソコン使ったから引き分けってとこかな」

『なんか慰められると余計負けた感じが…』

「そーか」

『あっ、呼ばれたんで切りますね』

「はいはい」


僕は無線を切ってバイクを止める。


「何時の間にやら着いてましたね」

「まっ、出立までは残り三時間半ってとこだからさっさと済ますぞ」

「分かりました、早く済ませましょう」


僕達はそう言ってショッピングモールに入り一時間ほどで基地に戻った。


「それで少佐殿、情報とは?」

「もうルドレアさん呼びはもう終わりか?」

「プライベートではありませんし…」

「別に軍務中でも呼んでもらって構わないが?」

「それは…」

「まあ、現にミリアも先輩って呼んでるしな」

「そうでしたね。じゃあ、私もルドレアさんと引き続き呼びます」

「では、リーネス中尉。これより情報のすり合わせを始める」


僕はこれからの事を色々教えてジェット機に乗り込む。

ジェット機の中は個室になっていて僕達はそのうちの右側二部屋に入った。


「ルドレアさん、音速ジェットってこんな感じなんですね」

「まあ、VIP用だしな」

「なんでそんな仕様の機体に?」

「色々あるがまず、超危険区域に侵入するのに普通の操縦士じゃ心配だからだな」

「まあそうですよね」

「それとあそこは緊急立入禁止地域になっているから普通の航空機が入った瞬間警備隊によって撃墜される。警告なしに」

「なるほど、よく理解しました」

「ていうか、死にたくなかったらさっさと部屋で椅子に座っとけよ」

「?」

「発射時にはかなり勢いが付くからな。飛んで水平を保てば問題は無いんだがな」

「つまりその勢いで吹っ飛ばされるってことですか?」

「ああ、なんせ超音速になるまで約1分だ。その間に掛かるGはかなりと予想される」

「早く戻りますね」

「ああ、発射して五分程経てば安全なはずだ」

「分かりました。では、また」


リーネスが自分の席に戻ったのを見た僕は自分の椅子に座りシートベルトを締める。

部屋には椅子と机にベッドとパソコンにソファーが備えられている。

それから数分後にジェット機は発進した。

そして、一時間半ほど経った頃僕の部屋にある人物が訪ねてきた。


「ヴィドレ少佐、久し振り~」

「この声はドグレイ少佐ですか?」

「ええ、昇進おめでとうね」

「こんな話し方しました?」

「だって、階級は同じだし」

「んじゃあ、僕も同じように」

「そうしてくれると嬉しい」

「それで?何でこのジェット機に乗ってるわけで?」

「まあ、色々ね…」


ドグレイ少佐は目を逸らしてそう言った。


「色々したわけか。まあ良い。銃は?」

「持ってないんだけど…」

「はい、コレ」

「これって…」

「マグナムリボルバー。最悪、それでどうにかしてね」

「良いの?」

「僕はこっちを使うんで」


僕はそう言ってSMG(Submachine gunの略)を見せる。


「それって確か」

「そう、ボルテミックス工廠製の最新型」

「良くそんな物買えたわね…」

「大体、40万弱」

「私の月給と同じ!?」

「まあ、こっちは臨時収入が入ってるから」

「そりゃ、臨時収入くらいは出るわよね…」

「ルドレアさ~ん」


僕らがそんな現実的な話をしているとドアが開く。

ドアの先にはリーネスが居た。


「貴官は…グアヴィレーム中尉と言ったか?」

「はい、リーネス=フォン=グアヴィレーム中尉であります」

「ヴィドレ少佐の部下か。超音速ジェットは初めてか?」

「はっ。うっ」

「まあ、初めて乗ると酔うよね…」

「ドグレイ少佐、出来ればもう一人も呼んできていただけますか?」

「ああ、あの学生ちゃん?」

「?」

「伏せろ!」


僕はそう言いながら二人の頭を押さえつけて無理矢理、伏せさせる。

その瞬間、右側の壁――つまりは外に面している方の壁――が吹き飛ぶ。


「「ッ!?」」

「二人とも、酸素マスクを急いで」

「…ルドレア…さん、息が…」

「嫌な予感はつくづく当たるらしい。ドグレイ少佐、気密扉の向こうにリーネス中尉を連れて行け。僕は一旦、足止めを」

「なんでヴィドレ少佐、貴官が指揮を執っている?」

「現場指揮官は僕です。急いでください。それと、後方の貨物室の連中を避難誘導してください。ソレが終わったら我々は離脱しましょう」

「…了解。ご武運を」

「ああ」


僕は目の前から堂々と侵入しようとしてくる鳥型のモンスターに銃の照準を合わせる。


「ふぅ。流石に息がしにくいな」


僕はそう呟き息を大きく吸い、トリガーを引く。

その瞬間、鳥型モンスターに風穴が開く。

しかし、後続の鳥型モンスターが入って来る。


「一体、何匹居るんだ?。撃っても撃っても減らんぞ」


僕は無線を繋ごうとする。

が、繋がらなかった。


「ああ、そうだった。妨害電波か。しかし、航空無線用の衛星通信なら」


僕はふとそう思いつきチャンネルを航空無線に合わせる。


『…ちらスペシャルエスコートよりスヴァールバル01へ。オーバー』

『こちらスヴァールバル01。感度良好。オーバー』

『緊急事態だ。護送機が何者かによって一部破壊、飛行に支障あり。緊急着陸する。ポイントを送る。誘導願う。オーバー』

『こちらスヴァールバル01、了解。ポイント…仮称ポイント・アルファと認定。現在より着陸誘導を開始する。オーバー』

『頼む。アウト』


僕は近くのソファーに身を隠してリロードする。

やはり、敵はほぼ減っていない。

カリュブディスよりは幾分かはマシだろう。

そんな時、下にパラシュートが開いたのが見えた。


「避難成功と見て良いな。んじゃ、逃げますか」


僕は気圧調整用のモニターを見ながら軽く調整して気密扉を出て貨物室から降下する。

下りながら見たところ、音速ジェットでは無く通常の航空機よりも少し早い程度の亜音速機と化していた。

降下するとドグレイ達が居た。


「ルドレアさん…生きてたんですね」

「ヴィドレ少佐、大丈夫ですか?」

「ああ。死ぬかと思った。これからどうするか…」


次回もよろしくお願いします。

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