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第二話

僕らは限界速度一杯まで出していた。

その速度は約140km/h。

ジープのエンジンからは変な音もし始めて居るがそんな事に構わずアクセルを踏む。

なぜこんな事になって居るのか…。

それは数分前のある出来事に起因する。


ー数分前ー


「先輩っ!」

「ミリア、各分隊の被害は?」

「はっ。第一分隊はほぼ損耗はありません。同じく第二分隊もヘリに乗っていたおかげで無事、問題の第三・第四分隊ですが、部隊の損耗率が75%。戦闘継続能力は皆無です」

「クソ野郎!ミリア、各分隊に徹底しろ。ヴァルハラへの抜け駆けは禁止だ。とな」

「はっ!」


漆黒の闇に紛れて5メートル大の鱗を300km/mで飛ばして来る“災厄”と呼ばれるモンスター……都市防衛軍参謀が名付けたコードネームは災厄の渦(カリュブディス)だ。

僕らはその鱗の破片でジープの一部に被害を被った。

そして今は、迫り来るモンスターを処理しつつジープと修理している

ジープの破損部位が少なかった為にビルに隠れつつもこんな状態が続いて居る。

上空では友軍攻撃機と爆撃機及び対戦車ヘリまでもが動員されて居る。

また、VIPを逃す為だけに大量のチヌークが動員されている。

状況は最悪。

第六要塞都市は既に太平洋沖に向かい全速離脱中だそうだ。

そんな状態で我々がどうやって要塞都市に帰るかと言うと第六では無く赴任予定だった第二学園要塞都市に向かう事にした。

司令部には話を通してもらって居るし、荷物もVIPを送るついでに送っておいて貰った。

ついでに死んだ時の遺品にでもして下さい、と言って。

偶々近くに居たのであろうドグレイ少将からの怒声が飛んで来たのはツイていなかった。


「隊長、第三・第四分隊結集完了しました!」

「御苦労。ミライゼ中尉。早速だが技術スタッフを集めてジープの修理に回せソレ以外は防御戦闘を徹底して行え。ウチは一杯一杯だ」

「了解しました。隊長」


ヴィータ=ミライゼ中尉がビシッと言う効果音が付きそうな位綺麗な敬礼をして分隊に命令を出す。

僕は修理中のジープに目を遣る。

後ろに積んでいた武器弾薬の類は殆ど無くなって居る。

有るのはスマートライフルとコンパクトサブマシンガンに携帯用の9mm自動拳銃のみ。

マガジンは各100個ほど。

まあ、かなり心許無いが探索班が帰って来れば多少はマシになると願う。

ウチの小隊は32人で構成されて一分隊あたり8人が割り当てられている。

ジープは一台につき4人乗りなので計8台用意されて居る。

が、今や生き残って居る物は4台が良いところ。

まあ、かなり無理やり改造して一台5人乗りにして居るが。


「先輩。探索班が帰って来ました。物資は無線と衛星地図端末、それと携帯食が38個です」

「携帯食は丁度一人二つか…。厳しいな」

「付近のビル群にも向かわせますか?」

「低層ビルに向かわせろ。高層ビルにはくれぐれも入らぬ様」

「了解しました。後で物資の配分を行います」

「頼んだ」


僕は27人しか生き残らなかった自分の部隊を見回す。

第二分隊は既に第二学園要塞都市に到着したそうだ。

ヘリに乗ってたのが功を奏した様だ。

こちらに残って居るのは19名。

二個分隊と3人の余りだ。

となると、編成を変えるしか無い。

それでも一人余るのだが…。


「大尉殿、修繕終了しました!」

「よろしい。物資も載せれる分だけ載せてしまえ。廃品は奴等に取られる可能性がある為C4爆弾で吹き飛ばす。ついでにビルの一つでも倒しておけ」

「了解しました。探索班の帰投は5分程だと」

「了解した。ジープに付いていた誘導弾は?」

「残念ながら信管が剥き出しになっていましたので使い物にはならないかと」

「では、ソレも一緒に吹き飛ばせ。誘爆を狙う。爆発させる時は出来る限り敵を集めてからで頼む」

「はっ。C4爆弾はどの程度に?」

「ふむ…そうだな、5kg弱使え」

「了解しました。用意しておきます」


そう言って敬礼をしてフィドクレア少尉は防御戦闘中の部隊を集めてビルに備え付けられて居るシャッターを閉じて時間稼ぎをしつつジープに人を物資を次々に運び入れて行く。

そして、探索班が戻って来た。

僕はミリアから探索結果を聞き、ジープに乗り込む。


「少し狭いですね。先輩」

「ああ。だが仕方あるまい」

『こちら02、01へ。オーバー』

「こちら01、02へ。ファイブナイン。感度良好。オーバー」

『こちらも感度良好。全車発車用意完了です。オーバー』

「了解。全部隊へ告ぐ、これ以上被害を出すな!一人たりともヴァルハラへの抜け駆けは許さんぞ!全車発進!」


僕のその掛け声と同時に5台のジープが動き出す。

ビルの地下駐車場だった場所から地上に向かって全車両がエンジンを吹かせる。


「よし、C4爆破!」


僕がそう言うと先程まで居た地下駐車場から火が噴き出しビルが崩れ始める。

ある程度はコレで倒せたと信じたい。


「先輩!例の奴です!」

「ミリア、全部隊に全速力で避難しろと伝えろ。向かう方向は変わらんとも伝えておけ」

「はっ」


ミリアが無線を入れる。

僕はエンジンを吹かせる。


ー時を戻して現在ー


「先輩、アレは捲けた様です」

「ふぅ。速度をある程度なら落として良いと伝えておけ」

「了解です」

『…こちら第二学園要塞都市防衛基地より周辺を走行中の車両へ。即座に識別信号を送られたし。――ちら…』

「こちらスピアヘッド01、第二学園要塞都市防衛基地へ。感度不良。繰り返す、感度不良。オーバー」

『こちら第二学園要塞都市防衛基地、コールサインはハンドラー02だ。スピアヘッドの話は聞いている。歓迎する。オーバー』

「ハンドラー02。今度は感度良好だ。手厚い歓迎感謝する。オーバー」

『ああ、早く来てくれウチの指揮官殿が煩いのでね。アウト』


僕は目の前に広がる機甲師団を見ながら苦笑する。


「先輩、何で機甲師団が?」

「此処はあっちと違って荒野だからな。敵の量も多い訳だ」

「あっちは廃棄区画ですし多そうですけど?」

「それでも二個砲兵師団が出張れば殲滅できる程度だ」

「…此処でやっちゃいけないタイプの攻撃手段ですよね」

「此処は上空からの空対地ミサイルと空対空ミサイルで片付くから砲兵は配置されてない筈だ」

「空対空と空対地ミサイルですか?」

「ああ。この都市は空中要塞だからな」

「そう言えばそうでしたね」

「取り敢えず全部隊に速度を落とすように伝えておいてくれ機甲師団に突っ込まれたら立つ瀬が無い」

「分かりました」


ミリアはそう言って後続のジープに連絡をする。

僕は機甲師団に無線を入れる。


「こちらスピアヘッド01、ノーベンバー01へ。聞こえるか?オーバー」

『こちらノーベンバー01。RSレポート。ファイブナイン。感度良好。オーバー』

「了解した。戦車の隙間を通りたいのだが良いか?オーバー」

『了解。貴官の隊の分は隙間を開けておこう。アウト』


僕は自分達の前の戦車が僕達を誘導し始めたのを見て「やはり手厚い歓迎だことだ」と微苦笑する。


「全部隊に通達。第二学園要塞都市防衛基地に到着に付き、武装解除をせよ」

『02、了解』『03、了解』『04、了解』


僕はソレを聞きつつ戦車が止まったのを見てジープを止める。


「失礼する。第一特殊小隊の指揮官で合ってるか?」

「ああ。小官が第一特殊小隊長ルドレア=フォン=ヴィドレ大尉であります。貴官は?」

「失礼した。私は第二学園要塞都市防衛基地第一機甲師団次席指揮官のヴィ―レス=ヒドア少佐である」

「少佐殿、失礼しました。それで小官に 何の御用でしょうか?」

「此処の指揮官が貴官を呼んでいる。付いて来ていただきたい」

「了解しました。少佐殿」

「それと私の事はヒドアと呼んで頂きたい」

「分かりました。ヒドア殿」

「では付いて来てくれ」


僕はミリアにジープを任せてヒドア少佐に付いて行く。


「此処が此処の司令官の部屋だ」


ヒドア少佐はそう言ってから扉をノックする。


「失礼します。第一機甲師団次席指揮官ヴィ―レス=ヒドア少佐であります。ヴィドレ大尉をお連れしました」

「入れ」

「失礼します」


ヒドア少佐はドアを開けて部屋に入る。

僕も続いて入り、ヒドア少佐の後ろに立つ。


「ヒドア少佐、ご苦労だった」


銀髪碧眼の男性がそう言い後ろに目配せするとヒドア少佐が出て行く。


「さて、貴官がヴィドレ大尉であるな?」

「はっ。第一特殊小隊長ルドレア=フォン=ヴィドレ大尉であります」

「私は第二学園要塞都市防衛基地指揮官フィアーネ=フォン=クレマティス少将だ。道中、大変だっただろう?」

「はい。かなり大変でした」

「例のカリュブディスはウチの観測用衛星でも確認できた。その為、参謀本部に連絡して対カリュブディス専用兵器PG-59を要請しておいた。安心したまえ、3時間後にはカリュブディスはこの世界から消える…はずだ」

「はず?」

「ああ、PG-59が効くかどうかは分からないからな…」

「なるほど。実験時は鱗ですから」

「ああ、鱗だけ吹っ飛ばせても意味が無い。それと、貴官は少佐に昇格だ」

「少佐でありますか?」

「ああ。後は貴官らの配属先だが…基本的に配属先は無い。自由に行動してくれ。授業に出るも良し、実戦演習を手伝うも良しだ。ただし、防衛時には役に立ってもらうぞ」

「了解しました。では、失礼します」


僕はそう言って部屋を出て自室に向かう。

学園要塞都市と言うだけはあってか学生が多い。

そんな時だった。

基地内に取り付けられているサイレンが鳴り響く。


『緊急。第一六観測部隊より入電。カリュブディスはPG-59の集中射撃によって怯むも依然目標は健在。よって、現在待機中の全部隊は対空攻撃態勢に移行せよ』


僕はそれを聞き走って小隊の控室に行く。


「先輩、昇格おめでとうございます。小隊の用意は終わっています」

「流石だな。それと新人が入ったそうだな?」

「はい。バーゲスト、フィティア、ルートア、オーゲルタ、グアヴィレーム少尉、こちらへ」


ミリアが向こうへ手招きをすると四人の男性と一人の少女が来た。


「先輩、こちらが新人であります」

「アリネ=バーゲスト少尉であります。本日付で第一特殊小隊に配属されました」

「同じく本日付で第一特殊小隊に配属された、リーティス=フィティア少尉であります」

「リードネア=ルートア少尉であります。本日付で第一特殊小隊に配属されました」

「ヴィグール=オーゲルタ少尉であります。本日付で第一特殊小隊に配属されました」

「リーネス=フォン=グアヴィレーム少尉であります。本日付で第一特殊小隊に配属されました」

「以上が配属された新人であります」

「私は第一特殊小隊小隊長ルドレア=フォン=ヴィドレ少佐である。それではグアヴィレーム少尉は第一分隊にオーゲルタ少尉は第二分隊、ルートア少尉は第三分隊、フィティア少尉は第四分隊、バーゲスト少尉は同じく第四分隊へ」

「「「「「はっ!」」」」」


五人はそう言って銃を抱えて出撃用意をする。


「先輩、どうします?」

「決まってんだろ?やられたらやり返す。勿論、百倍でな」

「ですよね」

「ああ。そっちは貴官に任せる」


彼らはどうなるのか――

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